OOHニュース
ライバルはスマートフォン―広がり続けるLEDディスプレイの可能性 ヒビノ株式会社
繁華街のビル上に並ぶ、鮮やかなLEDディスプレイ。鮮やかに映像を表示する様子は、都会を象徴する景観の一部ともいえる。一方で、店舗の売り場を彩ったり、ブランドイメージを表現したりと、空間演出のツールとしても有効だ。
多くのシーンでLEDディスプレイが活用されるのは、液晶モニターや紙ポスターといった従来のメディアにはないメリットがあるからにほかならない。アイデア次第で無限の可能性を秘めてもいる。
そんなLEDディスプレイとコントローラーを製造・販売するヒビノ株式会社のマーケティング担当者と営業担当2人に、LEDディスプレイが持つ強みと導入事例、今後の展開について聞いた。
LEDディスプレイが叶える柔軟な広告表現
大塚:まず御社の事業内容について、改めてお伺いできますでしょうか。
平子:LEDディスプレイとコントローラーの製造・販売がメインです。LEDディスプレイはユニットを組み合わせて形を自在に変えられるのですが、どの部分にどの画像を表示するか制御したり、画質を調整したりするハードウェアがコントローラーです。
大塚:営業のお二人はどういった商品を取り扱っているのでしょうか。代表的なお仕事を教えてください。
乗松:私たちが在籍するLEDソリューション部は、主にLEDディスプレイを中心とした常設案件を取り扱っています。屋外広告だけでなくリテーリングの案件もあり、私はユニクロ様の国内外の店頭ビジョンや、屋内のサイネージについても担当しています。大型店舗については設計段階から携わり、場合により現場を見ながら最適なデジタルサインをご提案しています。
下公:私は巨大猫の3D動画で話題になった「クロス新宿ビジョン」を担当しました。そのほか、主に官公庁向けに競技場の大型LEDディスプレイを担当しています。
大塚:新宿の媒体は大変注目を集めましたね。どのような経緯で設置されたのですか?
下公:ビルオーナー様とは新宿東口駅周辺の景観を、一変させることを目標に取り組んできました。その中で企画の段階からビジョンの注目度を高める為、SNS上でバズらせることをかなり意識されていました。結果的に、設置から半年経ってもニュースになっていて、大きな反響を感じています。
巨大な猫の3D映像が目を引く「クロス新宿ビジョン」。新宿の新たなランドマークとなった
大塚:大規模なプロジェクトを手がけられ、思い出も多いと思います。苦労話も含めて、OOHの仕事の醍醐味を聞かせてください。
乗松:単なる広告媒体ではなく、店舗のアイキャッチや待ち合わせ場所にもなるので、屋外広告は「街の顔」でもあり、当社の仕事は街づくりのひとつだと思っています。
屋外ならではの苦労もやりがいにつながりますね。例えば渋谷ハチ公前はいわばタイムズスクエアのような場所で拡散効果も高く、広告を出していること自体に意味があります。そのためお客様からの期待が非常に大きく、故障時の即時対応など手厚いサポートが求められます。繁華街なので道路占有は終電から始発までの時間で完了しなければなりませんし、天候にも影響されます。困難を乗り越え、ディスプレイが無事に表示されると、「やりきったな」という達成感を感じますね。
渋谷駅を降りると目に飛び込んでくる大型ビジョン。建物に合わせたしなやかな曲面形状で、どの方向からでも映像が見えやすい
下公:お客様のお持ちのイメージを、具現化できたときにやりがいを感じます。もちろん、ご予算と折り合いをつけつつ、トレンドやご用途にあった最適な製品を納入できるよう心がけています。新宿のプロジェクトでは、絶えず人通りの多い場所での施工でしたので、大変な思いをしましたが、綿密な調整を重ねたことで、設置が実現し、自信につながりました。
大塚:御社が考えるデジタルOOHの価値とは?
乗松:まず、従来の紙などのポスターと比べて自発光のLEDディスプレイは圧倒的に目立ちます。一方で、これまで課題であった重量や厚み、消費電力もかなり圧縮され、物理的な設置ハードルは低くなっています。
また、コンテンツの切り替えの容易さも比になりません。例えば従来の大型ボードでは、ゴンドラを使ってポスターを貼り替え、2週間後には撤去というケースがあります。その点、デジタルなら一瞬で切り替えができるので、例えば飲料メーカー様であれば1台のサイネージで「朝はお茶/昼はコーヒー/夜はビール」というように、複数の商品の訴求が可能です。初期投資こそかかりますが、費用対効果を考えれば非常に価値があるのではないでしょうか。
下公:SNSでの拡散効果も期待できます。最近では街の写真を撮るときにLEDビジョンを中心に撮影することが多いようです。ハードウェアを活かしてユニークな広告展開をすることで、2次的な広告効果が生まれてくると思います。
さらに、コンテンツ表現の幅を広げるものでもあります。例えば、ユニクロのロゴをデザインされたデザイナー様は、本来はロゴを立体的に表現したいと考えていたそうです。キューブ型のLEDができたことで、それが実現したと伺いました。平面であっても16:9というアスペクト比にとらわれないので、画面として個性を出しやすいと思います。
大塚:なるほど。もはや既存の紙ポスターと競合するものではないのかもしれませんね。
平子:現代はスマホさえあればあらゆる情報が手に入り、極端にいえば起きている間は常に動画を見ているような状態です。そのため屋外においても、従来のOOHが目に入りにくくなっていることは事実ですね。人の目をいかにとらえるかという点では、ライバルはスマホといえます。
大塚:では、ディスプレイメーカーとしての御社の一番の強みとは何でしょうか。
平子:映像と音響をセットで提供できる点です。映像のレンタル/販売、音響のレンタル/販売をマトリックス展開しており、各部門が連携を取りながらニーズに応えています。
乗松:弊社ではイベント等にレンタルする部署があり、ミスの許されないイベント本番で使用されるものと同等のクオリティの商品を、常設用に販売していたりもします。こうした高い安心感を生むクオリティの高さも強みだと思います。
大塚:リピートのお客様が多いということからも、信頼の高さがうかがえますね。
八景島シーパラダイスでは、大型LEDビジョンとプロジェクション映像を融合させてショーを演出
池袋西口公園野外劇場に設置された、幅約11メートルの大型LEDディスプレイ。映像、音、光、水をダイナミックにシンクロさせる演出連動システムも納入
広告媒体、空間演出、そして次世代のコミュニケーションツールに
大塚:製品開発のうえで大切にしているのはどのような点でしょうか。
平子:まず当社のルーツである映像については、単に絵が出ている・光っているというだけで満足せず、4K、8Kといったスペックで測れるようなレベルアップも当たり前だと考えています。言葉や数字に現せなくても他社とは違うと感じていただけるよう、色の再現度を追求しています。
大塚:実際、渋谷駅前を見てみても御社のディスプレイはきれいですよね。色の再現度というのは、LEDコントローラーの性能によるものなのですか?
平子:はい。絵をつくる基幹部分ですので、コントローラーを自社で製造している点が強みにつながっていると思います。
大塚:新技術の開発にも取り組んでいるのでしょうか。
平子:そうですね。最近では音と映像に「香り」という要素をプラスしたサイネージを開発しました。視覚、聴覚に次ぐ知覚である「嗅覚」に訴えかけ、記憶に残るプロモーション効果が期待できる製品です。
大塚:それはテレビやスマホでは叶わない機能ですね。
2020年から2021年にかけて、コロナ禍の影響はありましたか? 特に、最初の緊急事態宣言の際は渋谷も新宿も街の様子が一変しましたが。
乗松:もちろん影響はありましたが、プロジェクト自体は数年単位で計画されているものもあり、急にすべてが変わってしまったということはありませんでした。
平子:業界ではコロナの影響は限定的だと考えられていて、2024年の市場規模は2020年の約2倍になると見込まれています。ここからV字回復するのではないでしょうか。
大塚:確かにそうですね。それを踏まえて、今後どのような事業展開が考えられるでしょうか。
下公:コロナによって、リアルとバーチャル、在宅と外出という分断がはっきりしたと思います。どちらにも良さがありますが、LEDディスプレイによって自宅ではできない体験を提供していければと思います。特殊な機器を使わなくてもコンテンツの見せ方ひとつで大きな話題を提供できるものなので、そういった価値を追求していきたいです。
乗松:OOH以外のLEDディスプレイの使い方もあると思います。例えばある会社様では、社内に床も壁もLEDディスプレイで囲んだ配信スタジオをつくりました。コロナ禍でリモートのコミュニケーションやコンテンツ配信が一般的になり、発信力を高めたいというニーズから実現した案件です。当社では撮影、映像、音響、コンテンツ制作、配信までトータルでお取り扱いしていますので、お客様のニーズに合わせてパッケージ提案ができるのではないかと考えています。
大塚:ある意味、コロナ禍でさらに可能性が広がったともいえますね。今後もLEDディスプレイの進化に注目したいと思います。
ヒビノ株式会社
ヒビノクロマテックDiv.
LEDソリューション部
(左から)
マーケティング課 課長
平子了一
営業課
下公龍彦
営業課 担当課長
乗松安土
https://www.hibino.co.jp/
取材・文/大貫翔子
OOHメディア・ツール
■デジタルサイネージの販売・施工
メディア・ツール資料はこちら
多くのシーンでLEDディスプレイが活用されるのは、液晶モニターや紙ポスターといった従来のメディアにはないメリットがあるからにほかならない。アイデア次第で無限の可能性を秘めてもいる。
そんなLEDディスプレイとコントローラーを製造・販売するヒビノ株式会社のマーケティング担当者と営業担当2人に、LEDディスプレイが持つ強みと導入事例、今後の展開について聞いた。
LEDディスプレイが叶える柔軟な広告表現
大塚:まず御社の事業内容について、改めてお伺いできますでしょうか。
平子:LEDディスプレイとコントローラーの製造・販売がメインです。LEDディスプレイはユニットを組み合わせて形を自在に変えられるのですが、どの部分にどの画像を表示するか制御したり、画質を調整したりするハードウェアがコントローラーです。
大塚:営業のお二人はどういった商品を取り扱っているのでしょうか。代表的なお仕事を教えてください。
乗松:私たちが在籍するLEDソリューション部は、主にLEDディスプレイを中心とした常設案件を取り扱っています。屋外広告だけでなくリテーリングの案件もあり、私はユニクロ様の国内外の店頭ビジョンや、屋内のサイネージについても担当しています。大型店舗については設計段階から携わり、場合により現場を見ながら最適なデジタルサインをご提案しています。
下公:私は巨大猫の3D動画で話題になった「クロス新宿ビジョン」を担当しました。そのほか、主に官公庁向けに競技場の大型LEDディスプレイを担当しています。
大塚:新宿の媒体は大変注目を集めましたね。どのような経緯で設置されたのですか?
下公:ビルオーナー様とは新宿東口駅周辺の景観を、一変させることを目標に取り組んできました。その中で企画の段階からビジョンの注目度を高める為、SNS上でバズらせることをかなり意識されていました。結果的に、設置から半年経ってもニュースになっていて、大きな反響を感じています。
巨大な猫の3D映像が目を引く「クロス新宿ビジョン」。新宿の新たなランドマークとなった
大塚:大規模なプロジェクトを手がけられ、思い出も多いと思います。苦労話も含めて、OOHの仕事の醍醐味を聞かせてください。
乗松:単なる広告媒体ではなく、店舗のアイキャッチや待ち合わせ場所にもなるので、屋外広告は「街の顔」でもあり、当社の仕事は街づくりのひとつだと思っています。
屋外ならではの苦労もやりがいにつながりますね。例えば渋谷ハチ公前はいわばタイムズスクエアのような場所で拡散効果も高く、広告を出していること自体に意味があります。そのためお客様からの期待が非常に大きく、故障時の即時対応など手厚いサポートが求められます。繁華街なので道路占有は終電から始発までの時間で完了しなければなりませんし、天候にも影響されます。困難を乗り越え、ディスプレイが無事に表示されると、「やりきったな」という達成感を感じますね。
渋谷駅を降りると目に飛び込んでくる大型ビジョン。建物に合わせたしなやかな曲面形状で、どの方向からでも映像が見えやすい
下公:お客様のお持ちのイメージを、具現化できたときにやりがいを感じます。もちろん、ご予算と折り合いをつけつつ、トレンドやご用途にあった最適な製品を納入できるよう心がけています。新宿のプロジェクトでは、絶えず人通りの多い場所での施工でしたので、大変な思いをしましたが、綿密な調整を重ねたことで、設置が実現し、自信につながりました。
大塚:御社が考えるデジタルOOHの価値とは?
乗松:まず、従来の紙などのポスターと比べて自発光のLEDディスプレイは圧倒的に目立ちます。一方で、これまで課題であった重量や厚み、消費電力もかなり圧縮され、物理的な設置ハードルは低くなっています。
また、コンテンツの切り替えの容易さも比になりません。例えば従来の大型ボードでは、ゴンドラを使ってポスターを貼り替え、2週間後には撤去というケースがあります。その点、デジタルなら一瞬で切り替えができるので、例えば飲料メーカー様であれば1台のサイネージで「朝はお茶/昼はコーヒー/夜はビール」というように、複数の商品の訴求が可能です。初期投資こそかかりますが、費用対効果を考えれば非常に価値があるのではないでしょうか。
下公:SNSでの拡散効果も期待できます。最近では街の写真を撮るときにLEDビジョンを中心に撮影することが多いようです。ハードウェアを活かしてユニークな広告展開をすることで、2次的な広告効果が生まれてくると思います。
さらに、コンテンツ表現の幅を広げるものでもあります。例えば、ユニクロのロゴをデザインされたデザイナー様は、本来はロゴを立体的に表現したいと考えていたそうです。キューブ型のLEDができたことで、それが実現したと伺いました。平面であっても16:9というアスペクト比にとらわれないので、画面として個性を出しやすいと思います。
大塚:なるほど。もはや既存の紙ポスターと競合するものではないのかもしれませんね。
平子:現代はスマホさえあればあらゆる情報が手に入り、極端にいえば起きている間は常に動画を見ているような状態です。そのため屋外においても、従来のOOHが目に入りにくくなっていることは事実ですね。人の目をいかにとらえるかという点では、ライバルはスマホといえます。
大塚:では、ディスプレイメーカーとしての御社の一番の強みとは何でしょうか。
平子:映像と音響をセットで提供できる点です。映像のレンタル/販売、音響のレンタル/販売をマトリックス展開しており、各部門が連携を取りながらニーズに応えています。
乗松:弊社ではイベント等にレンタルする部署があり、ミスの許されないイベント本番で使用されるものと同等のクオリティの商品を、常設用に販売していたりもします。こうした高い安心感を生むクオリティの高さも強みだと思います。
大塚:リピートのお客様が多いということからも、信頼の高さがうかがえますね。
八景島シーパラダイスでは、大型LEDビジョンとプロジェクション映像を融合させてショーを演出
池袋西口公園野外劇場に設置された、幅約11メートルの大型LEDディスプレイ。映像、音、光、水をダイナミックにシンクロさせる演出連動システムも納入
広告媒体、空間演出、そして次世代のコミュニケーションツールに
大塚:製品開発のうえで大切にしているのはどのような点でしょうか。
平子:まず当社のルーツである映像については、単に絵が出ている・光っているというだけで満足せず、4K、8Kといったスペックで測れるようなレベルアップも当たり前だと考えています。言葉や数字に現せなくても他社とは違うと感じていただけるよう、色の再現度を追求しています。
大塚:実際、渋谷駅前を見てみても御社のディスプレイはきれいですよね。色の再現度というのは、LEDコントローラーの性能によるものなのですか?
平子:はい。絵をつくる基幹部分ですので、コントローラーを自社で製造している点が強みにつながっていると思います。
大塚:新技術の開発にも取り組んでいるのでしょうか。
平子:そうですね。最近では音と映像に「香り」という要素をプラスしたサイネージを開発しました。視覚、聴覚に次ぐ知覚である「嗅覚」に訴えかけ、記憶に残るプロモーション効果が期待できる製品です。
大塚:それはテレビやスマホでは叶わない機能ですね。
2020年から2021年にかけて、コロナ禍の影響はありましたか? 特に、最初の緊急事態宣言の際は渋谷も新宿も街の様子が一変しましたが。
乗松:もちろん影響はありましたが、プロジェクト自体は数年単位で計画されているものもあり、急にすべてが変わってしまったということはありませんでした。
平子:業界ではコロナの影響は限定的だと考えられていて、2024年の市場規模は2020年の約2倍になると見込まれています。ここからV字回復するのではないでしょうか。
大塚:確かにそうですね。それを踏まえて、今後どのような事業展開が考えられるでしょうか。
下公:コロナによって、リアルとバーチャル、在宅と外出という分断がはっきりしたと思います。どちらにも良さがありますが、LEDディスプレイによって自宅ではできない体験を提供していければと思います。特殊な機器を使わなくてもコンテンツの見せ方ひとつで大きな話題を提供できるものなので、そういった価値を追求していきたいです。
乗松:OOH以外のLEDディスプレイの使い方もあると思います。例えばある会社様では、社内に床も壁もLEDディスプレイで囲んだ配信スタジオをつくりました。コロナ禍でリモートのコミュニケーションやコンテンツ配信が一般的になり、発信力を高めたいというニーズから実現した案件です。当社では撮影、映像、音響、コンテンツ制作、配信までトータルでお取り扱いしていますので、お客様のニーズに合わせてパッケージ提案ができるのではないかと考えています。
大塚:ある意味、コロナ禍でさらに可能性が広がったともいえますね。今後もLEDディスプレイの進化に注目したいと思います。
ヒビノ株式会社
ヒビノクロマテックDiv.
LEDソリューション部
(左から)
マーケティング課 課長
平子了一
営業課
下公龍彦
営業課 担当課長
乗松安土
https://www.hibino.co.jp/
取材・文/大貫翔子
OOHメディア・ツール
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