OOHニュース
「移動×体験」で東京の景色を変えるタクシーサイネージ 株式会社ニューステクノロジー 三浦純揮
タクシーに乗ると目の前のサイネージにコンテンツが表示されるのは、もはや日常の風景。サイネージは質・量ともに着実に進化し、広告媒体としての価値を高めている。
ニューステクノロジーが考える次の一手は、「移動時間のエンタメ化」だ。単なる広告ではなく「有益な情報源」として支持されるための、同社の戦略を聞いた。
ハードとソフトから新たな価値をプラス
大塚:2021年に取材させていただいた際、「GROWTH」は約11000台導入済みと伺いましたが、現在はいかがですか?
三浦:この2年で1000台ほど増えまして、約12000台に導入されています。現在、東京で稼働している大半のタクシーには、弊社の「GROWTH」を含め、サイネージ端末が搭載されている状態です。
私自身、タクシーに乗る機会が多いのですが、まれにサイネージが搭載されていないタクシー車両を見ると「まだあるんだ」と驚きますよ。
大塚:確かに、タクシーに乗ったら目の前にモニターがあるというシチュエーションが当たり前になりましたよね。
三浦:はい。乗客の可処分時間を占有する以上、意味のある時間にしなければと思っています。
大塚:例えば、どのような?
三浦:まず、2022年10月にタブレットを大きく、高精細なものに更新しました。サイズは従来比156%アップし、ノートパソコンと同等レベルになっています。
大塚:そうでしたね。初めて見たときは大きさと画質に驚きました。
三浦:同時に、オリジナルの情報番組「HEADLIGHT」の制作も始めました。以前から動画コンテンツの制作は行っていましたが、既存コンテンツとコラボするのではなく、独立した番組を作っていこうという方針です。
MCに青木源太アナウンサーと山崎怜奈さんを起用し、ニュースやグルメ、レジャーなどさまざまなカテゴリのコンテンツをお届けしています。
大塚:ハード、ソフト両面から価値をプラスしていると。
三浦:そうですね。東京のタクシーユーザーは基本的に忙しい方が多いので、移動時間に知っておくとためになる情報の提供を目指し、番組づくりをしています。
知りたいことがあればすぐに検索できる時代だからこそ、「興味の一歩外側」にある情報を提供したいと考えているんです。
また、広告の合間に、ニュース性のある有益な情報を提供することで全体のバランスを整え、媒体としての価値を向上することにもつながっています。
大塚:番組はすべて社内で制作されているのですか?
三浦:はい。当社はもともと社内に映像制作の事業部があり、撮影スタジオや制作環境が充実しています。
企画から撮影、編集、放映まで一貫して対応でき、番組自体をタイアップ枠としてご利用いただくことも可能です。
大塚:自社で映像を持っていないクライアントも多いでしょうから、これは嬉しいですね。
「いつでも必ずそこにある」ことの意義
大塚:以前伺ったときにはBtoBのクライアントがメインとのことでしたが、広告主の傾向はいかがですか?
コロナ禍の影響もあったのではないでしょうか。
三浦:リモートワークの導入でニーズが急増したSaaS系商材の出稿は少し落ち着き、代わりにシャンプーのような一般消費財メーカーからの受注が増えています。
一般的に屋外広告は人が外に出ないと売れないといわれますが、「GROWTH」に関してはそういった影響を受けませんでしたね。
大塚:リピートされるクライアントも多いですか?
三浦:はい。約30%(調査期間:2022年4月-9月・2022年10月-2023年3月)の企業が効果を実感されてリピートしていただいています。
屋外広告の本質って、「いつでも同じ場所に存在する」ということだと思うんですよね。例えば渋谷のハチ公前も、必ずそこに犬の像があるから共通認識になるわけで、毎週変わっていたら待ち合わせスポットとして機能しません。
ですから広告も、特定のロケーションに長期間出し続けることがもっとも効果的なんです。
短期集中型のメディアミックスプロモーションに比べて、効果が検証しやすいという側面もあります。
大塚:おっしゃる通りです。ぜひ「OOH=長期」という考え方で検討していただきたいですよね。
三浦:そうなんです。情報に接触する回数は重要だと考えているので、「GROWTH」への出稿は最低3カ月以上でご案内し、年間契約の場合は広告主の課題やニーズに合わせて、中長期でコスト・クリエイティブ・メニューを総合的にプランニングしています。
移動時間が「特別な体験」に
大塚:「Canvas」の方では、新しい動きはありますか?
三浦:2023年4月にAI通訳機「ポケトーク」とコラボレーションしたプロモーションが話題となりました。
車内に実機を搭載して、ポケトークの翻訳機能を体験できるものです。車内のサイネージで製品情報を放映し、画面上のQRコードから購入できるスキームも組みました。
タクシー運転手さんに行ったアンケートの結果では、9割程度の方が「外国人観光客が増えている」と感じているそうで、インバウンドのニーズは確実に増えています。
大塚:なるほど、車内がタッチ&トライの場になるわけですね。タクシーを活用したビジネスについて、今後はどのような展開をお考えですか?
三浦:まず広告媒体としては、タクシーユーザーは企業の決裁者が多いのが特徴なので、ハイクラス人材サービスや不動産、投資商材、時計など、富裕層向けのプロモーションに適しています。
一方でタクシーユーザーはTVCMへの接触率が低い傾向があるので、マス広告の補完としても活用いただけるのではないでしょうか。
また「Canvas」に関しては、サイネージの開発を進め、メニューを拡充しました。新メニューでは、ブランドやサービスの世界観をより伝えることができる複数の新機能を実装しました。
下部のメニューバーをタップすると、単一の動画コンテンツの視聴が可能なほか、複数の動画から動画を選択することも可能です。
そのほか、リアウィンドウ広告の販売も開始し、外観から車内までメニューが豊富になり、訴求力が向上しました。
また、今後自動運転が普及していけばタクシーでの移動コストが下がり、移動時間が長くなると見込んでいます。
それに伴い車の中の可処分時間が増えていくはずなので、移動そのものを体験にして収益を上げていくことを考えています。
例えば「ジャイアンツタクシー」は、巨人戦の試合の日に東京ドームに送迎すると同時に、車内で選手からのメッセージ動画を見たり、オリジナル応援グッズで気分を高めたりと特別な体験ができるものです。
ほかにも、アーティストのライブやミュージカル公演に合わせたプロモーションを行えば、「推し活」の一部として、ユーザーにリピート利用してもらえる可能性を秘めています。
大塚:「体験」が一つのキーワードになりそうですね。12000台のタクシーといえば一つのインフラなので、スケール次第では東京の景色が変わるのかもしれません。今後が楽しみです。
プロフィール
株式会社ニューステクノロジー
代表取締役 三浦 純揮
https://newstech.co.jp/
1988年生まれ。北海道札幌市出身。 立命館大学卒業後、株式会社ベクトル入社。 入社僅か1年後にベクトルチャイナを立ち上げ、 ベクトルアジア展開に貢献。 2018年3月よりニューステクノロジー 代表取締役に就任。 都内最大級のタクシーサイネージメディア「GROWTH」・日本初のモビリティ車窓メディア「Canvas」など、 モビリティプラットフォーム事業を中心に メディア事業、クリエイティブ事業を管轄。
取材・文/大貫翔子
ニューステクノロジーが考える次の一手は、「移動時間のエンタメ化」だ。単なる広告ではなく「有益な情報源」として支持されるための、同社の戦略を聞いた。
ハードとソフトから新たな価値をプラス
大塚:2021年に取材させていただいた際、「GROWTH」は約11000台導入済みと伺いましたが、現在はいかがですか?
三浦:この2年で1000台ほど増えまして、約12000台に導入されています。現在、東京で稼働している大半のタクシーには、弊社の「GROWTH」を含め、サイネージ端末が搭載されている状態です。
私自身、タクシーに乗る機会が多いのですが、まれにサイネージが搭載されていないタクシー車両を見ると「まだあるんだ」と驚きますよ。
大塚:確かに、タクシーに乗ったら目の前にモニターがあるというシチュエーションが当たり前になりましたよね。
三浦:はい。乗客の可処分時間を占有する以上、意味のある時間にしなければと思っています。
大塚:例えば、どのような?
三浦:まず、2022年10月にタブレットを大きく、高精細なものに更新しました。サイズは従来比156%アップし、ノートパソコンと同等レベルになっています。
大塚:そうでしたね。初めて見たときは大きさと画質に驚きました。
三浦:同時に、オリジナルの情報番組「HEADLIGHT」の制作も始めました。以前から動画コンテンツの制作は行っていましたが、既存コンテンツとコラボするのではなく、独立した番組を作っていこうという方針です。
MCに青木源太アナウンサーと山崎怜奈さんを起用し、ニュースやグルメ、レジャーなどさまざまなカテゴリのコンテンツをお届けしています。
大塚:ハード、ソフト両面から価値をプラスしていると。
三浦:そうですね。東京のタクシーユーザーは基本的に忙しい方が多いので、移動時間に知っておくとためになる情報の提供を目指し、番組づくりをしています。
知りたいことがあればすぐに検索できる時代だからこそ、「興味の一歩外側」にある情報を提供したいと考えているんです。
また、広告の合間に、ニュース性のある有益な情報を提供することで全体のバランスを整え、媒体としての価値を向上することにもつながっています。
大塚:番組はすべて社内で制作されているのですか?
三浦:はい。当社はもともと社内に映像制作の事業部があり、撮影スタジオや制作環境が充実しています。
企画から撮影、編集、放映まで一貫して対応でき、番組自体をタイアップ枠としてご利用いただくことも可能です。
大塚:自社で映像を持っていないクライアントも多いでしょうから、これは嬉しいですね。
「いつでも必ずそこにある」ことの意義
大塚:以前伺ったときにはBtoBのクライアントがメインとのことでしたが、広告主の傾向はいかがですか?
コロナ禍の影響もあったのではないでしょうか。
三浦:リモートワークの導入でニーズが急増したSaaS系商材の出稿は少し落ち着き、代わりにシャンプーのような一般消費財メーカーからの受注が増えています。
一般的に屋外広告は人が外に出ないと売れないといわれますが、「GROWTH」に関してはそういった影響を受けませんでしたね。
大塚:リピートされるクライアントも多いですか?
三浦:はい。約30%(調査期間:2022年4月-9月・2022年10月-2023年3月)の企業が効果を実感されてリピートしていただいています。
屋外広告の本質って、「いつでも同じ場所に存在する」ということだと思うんですよね。例えば渋谷のハチ公前も、必ずそこに犬の像があるから共通認識になるわけで、毎週変わっていたら待ち合わせスポットとして機能しません。
ですから広告も、特定のロケーションに長期間出し続けることがもっとも効果的なんです。
短期集中型のメディアミックスプロモーションに比べて、効果が検証しやすいという側面もあります。
大塚:おっしゃる通りです。ぜひ「OOH=長期」という考え方で検討していただきたいですよね。
三浦:そうなんです。情報に接触する回数は重要だと考えているので、「GROWTH」への出稿は最低3カ月以上でご案内し、年間契約の場合は広告主の課題やニーズに合わせて、中長期でコスト・クリエイティブ・メニューを総合的にプランニングしています。
移動時間が「特別な体験」に
大塚:「Canvas」の方では、新しい動きはありますか?
三浦:2023年4月にAI通訳機「ポケトーク」とコラボレーションしたプロモーションが話題となりました。
車内に実機を搭載して、ポケトークの翻訳機能を体験できるものです。車内のサイネージで製品情報を放映し、画面上のQRコードから購入できるスキームも組みました。
タクシー運転手さんに行ったアンケートの結果では、9割程度の方が「外国人観光客が増えている」と感じているそうで、インバウンドのニーズは確実に増えています。
大塚:なるほど、車内がタッチ&トライの場になるわけですね。タクシーを活用したビジネスについて、今後はどのような展開をお考えですか?
三浦:まず広告媒体としては、タクシーユーザーは企業の決裁者が多いのが特徴なので、ハイクラス人材サービスや不動産、投資商材、時計など、富裕層向けのプロモーションに適しています。
一方でタクシーユーザーはTVCMへの接触率が低い傾向があるので、マス広告の補完としても活用いただけるのではないでしょうか。
また「Canvas」に関しては、サイネージの開発を進め、メニューを拡充しました。新メニューでは、ブランドやサービスの世界観をより伝えることができる複数の新機能を実装しました。
下部のメニューバーをタップすると、単一の動画コンテンツの視聴が可能なほか、複数の動画から動画を選択することも可能です。
そのほか、リアウィンドウ広告の販売も開始し、外観から車内までメニューが豊富になり、訴求力が向上しました。
また、今後自動運転が普及していけばタクシーでの移動コストが下がり、移動時間が長くなると見込んでいます。
それに伴い車の中の可処分時間が増えていくはずなので、移動そのものを体験にして収益を上げていくことを考えています。
例えば「ジャイアンツタクシー」は、巨人戦の試合の日に東京ドームに送迎すると同時に、車内で選手からのメッセージ動画を見たり、オリジナル応援グッズで気分を高めたりと特別な体験ができるものです。
ほかにも、アーティストのライブやミュージカル公演に合わせたプロモーションを行えば、「推し活」の一部として、ユーザーにリピート利用してもらえる可能性を秘めています。
大塚:「体験」が一つのキーワードになりそうですね。12000台のタクシーといえば一つのインフラなので、スケール次第では東京の景色が変わるのかもしれません。今後が楽しみです。
プロフィール
株式会社ニューステクノロジー
代表取締役 三浦 純揮
https://newstech.co.jp/
1988年生まれ。北海道札幌市出身。 立命館大学卒業後、株式会社ベクトル入社。 入社僅か1年後にベクトルチャイナを立ち上げ、 ベクトルアジア展開に貢献。 2018年3月よりニューステクノロジー 代表取締役に就任。 都内最大級のタクシーサイネージメディア「GROWTH」・日本初のモビリティ車窓メディア「Canvas」など、 モビリティプラットフォーム事業を中心に メディア事業、クリエイティブ事業を管轄。
取材・文/大貫翔子
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