今回の記事は、OOHのプロである現王園さんに寄稿していただき掲載しております。
現王園さんは現在イギリスでお仕事をされており、日本に留まらずグローバルな視野でOOHについて発信をされております。
Twitterやnoteで発信をされているのでチェックしてみてください。
文/現王園章太
The Drumというマーケティング情報を集めたWebsiteがあるのですが、彼らの主催するThe Drum Awards Out of home の受賞式が11月25日に行われました。
The Drum は、欧米を中心に月間アクティブユーザーが140万人を超えるWebsite で、The Drum Awards Out of homeはOOHに特化した広告賞として、エントリー数が世界最大規模 となっています。
エントリーのハードルが低く、動画がマストではなく、Wordに内容を書き、写真があれば良いので多くの作品がエントリーできることが理由です。
今回は、2019年8月から2020年8月に実施されたOOHキャンペーンを対象として表彰が行われましたが、受賞作品の中から気になった作品について書いていきます。
OOH業界を盛り上げることが目的
この広告賞は、OOH広告業界を盛り上げることが、1番の目的とされています。
その為、アワードのカテゴリ数が非常に多く設定されています。
グランプリ格のChair's AwardとGrand Prixを含めて計30個あります。 これは、多くの媒体社/代理店に受賞機会を与え、広告主との関係構築やPR として活用して欲しいという狙いからです。
実際、受賞後には各媒体社/代理店がtwitterで、広告主へのメンションを含む形 で、広告賞に関する投稿を行っています。
受賞作品のカテゴリーは以下の通りとなっています。
≪賞一覧≫
Chir's Award
Grand Prix
Best Use of Location
Best Use of Digital
Best Interconnected OOH Formats
Classic Posters and Banners
Copywriting
Disruptive
Experiential/Ambient
Extrasensory
Response to Covid-19 - Best Use of OOH Media for Good
Response to Covid-19 - Best Creativity and Innovation during Covid-19
Response to Covid-19 - Best Collaborative Campaign during Covid-19
Interactive
International Campaign
Innovation
Local Campaign
Most Talked About
Multi-channel Strategy
Most Effective Use of Mobile
Most Effective Use of Live Updates
National Campaign
Not For Profit
Small Budget
Special Builds and Site Adaptions
Spectacular
Transport
Use of Data
Use of Digital Technologies
Visual Craft
これだけの種類の賞があると、特徴がわかりづらかったり、同一キャンペーンで複数の賞を受賞することもあり、さすがに30は多すぎるな という感覚はあります。
そんな30のカテゴリの中から、気になった受賞作品を具体的に見ていきましょう。
昼と夜で見え方の違うOOH広告
まずは最優秀賞にあたるChair's Award の受賞作品です。
VIDEO
■広告主:BBC(放送局)
■告知内容:DRACULA
■受賞した賞:
Chir's Award
Special Builds and Site Adaptions
Most Talked About
こちらの広告は昼と夜に見える広告に違いがある。
という所が特徴で、夜になると看板に設置されたライトが、板面に刺されている棒を照らしてテレビドラマのキャラクターでもあるドラキュラの顔が見える仕掛けになっています。
このような仕掛けは、実際の環境で設置するとズレが生まれてデザインの再現性が悪くなったりすることもあるのですが、ドラキュラの歯の部分まで完璧に仕上がっています。
選考された理由でも語られていたのですが、「思いついたアイディアを具現化した実行力」 を評価されての受賞となっています。
コロナ化で協力し合った媒体社
続いては、準グランプリと言えるGrand Prixを受賞した作品 を紹介します。
■広告主:twitter
■告知内容:#MyHeroes
■受賞した賞:
Grand Prix
Response to Covid-19 - Best Use of OOH Media for Good
ロックダウンの発令されたイギリスは、OOH広告もキャンペーンの多くが中止・延期 となり、空き枠が相次いでしまう状態になってしまいました。そんな中、医療従事者の支援を目的として、#MYHEROESがついているtwitterの投稿をOOHで放映するキャンペーンを実施します。
このキャンペーンを広く周知するため、代理店が媒体社に媒体枠の無償提供を依頼し、15社の媒体社がこの企画に賛同したことで、枠を提供することとなります。
最終的に合計で1292面で広告が放映されました。
企画立案から実施までのスピードも速く、ロックダウンから1週間以内にはキャンペーンがローンチ しておりました。
困難な状況を過ごす医療従事者を応援する。というポジティブなアイディアに加えて、コロナ禍で媒体社が横断的に協力した点を評価 されての受賞となっています。
期待感の高まるライブストリーミング
全ての作品を紹介していると物凄い数になってしまいますので、その他受賞作品から3つほど気になった作品をピックアップしてご紹介します。
まずは、Most Effective Use of Mobile の受賞作品です。
VIDEO
■広告主:Samsung
■告知内容:Galaxy S20
■受賞した賞:
Most Effective Use of Mobile
Multi-channel Strategy
こちらの作品はイベントに連動する形でOOHを活用したものです。
イギリスの有名歌手であるLewis Capaldiさんが商業施設のスペースにてサプライズでコンサートを行ったのですが、この模様をSamsungの新しいSmart phone Galaxy S20で撮影し、それを複数のDOOHでライブストリーミングした。 という内容になっています。
サプライズで行われたイベントですが、テレビCMでこれからサプライズコンサートを行うよ。というコメント入りのCMを当日に流すなど、複数のメディアとの連携を行っていたこと が受賞の理由となっています。
OOH媒体でのライブストリーミングは数年前から長らく行われていますが、スマホの画質の向上に加えて5Gの普及、サイネージ画面の4K,8K化によって高品質で提供できるようになる事で、今後増えていく事例だと個人的にも思っています。
リアルタイムな投票結果を表示
次はBest Use of Digital を受賞した作品をご紹介します。
■広告主:Mondelez
■告知内容:Cadbury(チョコレート)
■受賞した賞:
Best Use of Digital
「Cadbury(チョコレート)の好きな味は?」
という人気投票を行うキャンペーンをWebで実施していたのですが、その期間中に、リアルタイムな投票状況と投票後の最終結果 をデジタルサイネージにて放映しています。
Webで行われているキャンペーンと連動しているのに加え、投票結果を地域ごとで表示(デジタルサイネージが設置されているエリア)するこで、”ロケーション”というOOHの特性を上手く活用した作品 となっている事が、評価のポイントとなっております。
ターゲットに合った媒体選定とクリエイティブ
最後は、Best Use of Location/Extra Sensoryの2つを受賞した作品 を紹介します。
VIDEO
■広告主:Klarna(ECサイト)
■告知内容:Klarna
■受賞した賞:
Best Use of Location
Extra Sensory
ECサイトのKlarnaは自社の顧客データベースを見る中で、優良顧客に犬を飼っている人が多い ことを発見していました。
(※Klarnaはペット向けの商品だけに特化したサイトではありません)
そこで、Klarnaは”犬を飼っている人”をターゲットにOOHキャンペーン を実施します。
犬を連れて遊ぶ人が多い公園の近くの壁面に、犬が遊んでいるデザインを描き、犬の遊び道具を壁面に貼り付けて犬の興味を引くことを考えました。
OOHに犬が興味を引き寄せられることによって、飼い主が訪れ、愛犬が巨大壁面&おもちゃに喜んでいる様子をSNSに投稿してもらい、ペットコミュニティ内で拡散する。 といった流れです。
デザイン内にはQRコードも掲載されており、そのままKlarnaのWebサイトにアクセスできる仕組みを作っています。
自社の潜在顧客がどこにいるのかを選定し、クリエイティブで課題を解決する。「データ」×「クリエイティブ」が掛け合わさった点が評価 されての受賞です。
以上、コロナ禍によってOOHキャンペーンの事例も例年より少ない中ですが、読んで頂いた皆様にとっても、興味深い事例があったのではないでしょうか。
受賞作品を見ていると、データ・リアルタイム・ライブ というのがキーワードになっているのがわかりますね。この3つのキーワードを含むキャンペーンがOOHのトレンドを抑える。 という事になりそうです。
来年は、自分が関ったキャンペーンがノミネートされることを目指して、頑張っていきたいと思います!
Shota Gennozono
平日は広告代理店勤務(屋外広告と交通広告を中心に8年間)で、現在はイギリスに出向中。
twitter(@gennozono) では、 #OOHマーケティング でOOHを起点としたマーケティングについて考えてます。
現王園さんはOOHに関する記事をnoteに投稿されてます。
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