OOHニュース
擬態するポップアップショップ | 青木慎二
今回の記事は、アンビエント広告を中心に、街なかに良質な違和感を演出する青木さんに寄稿していただき掲載しております。
青木さんは現在、株式会社メディアコンシェルジュでお仕事をされており、面白いOOHのアウトプットを数多く手がけられております。
noteで発信をされているのでチェックしてみてください。
文/青木慎二
目次
・コンビニに擬態
・昭和レトロ喫茶に擬態
・ゲーセンに擬態
・お祭に擬態
・世界観を拡張するためのモチーフ探し
・細部にこだわり本気で遊ぶ
・ブランドは協賛したい訳じゃない
・遊び心がブランドの懐の深さ
・次の潮流は?
コンビニに擬態
青木慎二
アンビエント広告を中心に、街なかに良質な違和感を演出する仕事をしています。 都市とローカルを行き来するなかでの気づきを大切にしていきたい。 出雲の工房で妻がつくる自家製酵母パンや発酵食についても発信していきます。
株式会社メディアコンシェルジュ所属/キノトマ代表
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青木さんは現在、株式会社メディアコンシェルジュでお仕事をされており、面白いOOHのアウトプットを数多く手がけられております。
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文/青木慎二
目次
・コンビニに擬態
・昭和レトロ喫茶に擬態
・ゲーセンに擬態
・お祭に擬態
・世界観を拡張するためのモチーフ探し
・細部にこだわり本気で遊ぶ
・ブランドは協賛したい訳じゃない
・遊び心がブランドの懐の深さ
・次の潮流は?
コンビニに擬態
atomosのコンビニ「atomos mart」が期間限定でオープンしたようです。
日本らしさをひと目で表現できるインターフェイスを備えた「コンビニ」をコンセプトに据えて、店内外のファサードや什器や商品ラインナップもatomos風に翻訳されています。芸が細かくて素敵です。
「コンビニ」にインスピレーションを受けた「AIR MAX COLLECTION」の発売からのアイデアのようですね。
近しい過去事例として、2018年にはカルティエのコンビニ「カルチエ」もありました。これも素晴らしかった。
グローバルで展開するラグジュアリーブランドが、そのブランド名をカタカナにデフォルメしてしまう意思決定!
ネーミングだけでなく、外装内装を含むアートディレクションや名店とコラボした商品ラインナップも上質でした。
“日常をプレシャスに”というコンセプトで、「コンビニ」を特別な場所へとアップデートするに至ったようです。
銀座ソニービルには藤原ヒロシ氏がディレクションする「コンビニ」もありました。
さらに遡る2013年にはマスターマインドのコンビニが。
昭和レトロ喫茶に擬態
一方、「Starbucks coffee」が「スタアバックス珈琲」として昭和レトロ喫茶に擬態したこともありました。
ゲーセンに擬態
そしてシャネルはゲーセンに。
エンポリオ・アルマーニもゲーセンを。
ゲーセンやアーケードゲームをモチーフにしたブランドは他にもありましたね。
お祭に擬態
シャネルは和モダンな夏祭りも。フェスではなくお祭り。
コンバースは絢爛豪華な夜祭シズル。
以上、ブランドが別業態に擬態するポップアップショップの事例でした。「カフェ」「バー」「花屋」など、あげていったらキリがありませんね。
世界観を拡張するためのモチーフ探し
グローバルブランドは特に日本らしさが分かりやすいモチーフで遊び、その模様を世界に発信することで、西洋から見た「オリエンタルで良質な違和感」を演出したいのでしょう。
「祭」「寺社仏閣」「城」「古民家」「銭湯」など古風な文化的象徴から、「コンビニ」「回転寿司」「屋台」「カプセルホテル」「自動販売機」といった現代的装置まで、ブランドはモチーフ探しに必死です。
これはポップアップショップに限りません。
細部にこだわり本気で遊ぶ
コレクションやパーティ会場の装飾だけでなく、期間限定の店舗として細部へこだわり尽くしてオープンすることで、メッセージに本気度が付加されます。
遊び心あふれるアイデアに対して、細部へのこだわりも含めて「とことん本気で遊ぶ」ことで、どこを撮ってもSNSの被写体だらけとなり話題がブーストしていく傾向があるので、制作陣は手が抜けません。
ブランドは協賛したい訳じゃない
「うちのブランドは協賛したい訳ではなく主催したいんです。」
とあるブランドの担当者にこんなことを言われたことがあります。しかもひとつではなく複数のブランドから。
街なかでインパクトのあるイレギュラーな広告演出案を企画するものの通常ルールでは実施できない場合、その場を管轄する組織やイベントへ協賛する体裁をとったうえで実施を調整していくという作戦をとることがあります。
ですが、ブランド側からとにかく「協賛はNG」と言われてしまい着地できなかったことがありました。「協賛:株式会社〇〇」という表記自体がNG、と予め決められていたようです。
ブランドは自ら自由に主催したいんです。
これまで様々な著名ブランドの仕事をお手伝いしてきましたが、明確にパーパスが定まっているブランドほど、実施したい内容や表現のこだわりが強く、協賛やコラボレーションの許容範囲も狭い傾向があります。
ブランドはわがままです。他の団体やイベントに対して大きな方向性は合意しても、詳細表現が合致することはなかなかありません。
そんなわがままなブランドは、外部パートナーに頼らずに全て自分たちでやりたいように企画してしまうほうが都合がいいのでしょう。確かに大手コンビニとコラボするなら自分でコンビニをつくってしまおう、ってなりますよね。
遊び心がブランドの懐の深さ
ブランドが独自のメッセージを自由に発信する場づくりにおいては、期間限定で別業態をモチーフにお店をつくってみる遊びがちょうどよいようです。「え!こんなのあり?」くらいを狙わないと話題にすらならない時代ですし。
少し話がそれますが、このGUCCIのBAGすごいですよね。
次の潮流は?
拡張していくブランドは、コンセプトやその意味づけにおいて、まだ手付かずのモチーフをこれからも探し続けるでしょう。
次のモチーフの潮流はなんでしょうか?
過去を振り返ってみると、「前衛的な現代アートの作品の文脈」から「大衆ブランドの広告モチーフ」に採用されていく流れがある気もします。
エルメスが2019年に実施した「ラジオエルメス」(インターネットラジオ放送局)のような方向性も、拡がりが面白いですよね。
遊び心に溢れる意外な組み合わせは街の文化度にも奥行きをもたらします。
新たな切り口のポップアップショップをこれからもwatchしつつ、自分でも企画していきたいと思います。
青木慎二
アンビエント広告を中心に、街なかに良質な違和感を演出する仕事をしています。 都市とローカルを行き来するなかでの気づきを大切にしていきたい。 出雲の工房で妻がつくる自家製酵母パンや発酵食についても発信していきます。
株式会社メディアコンシェルジュ所属/キノトマ代表
青木さんはOOHに関する記事をnoteに投稿されてます。
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