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【keyperson interview】パーティークリエイターもとい“体験クリエイター”・アフロマンスさん「やっぱり『♯楽しいが必要だ』コロナが気付かせてくれた、今、本当に大切なもの」【前編】

SPACE MEDIAを運営するミューカ代表・大塚省伍がOOH業界を牽引するキーパーソンの方々と対談を行い、変化の激しい業界の未来を創造する特集企画。
 
第4回目の対談相手は話題のイベントを数々手掛けてきた体験クリエイターのアフロマンスさん。2012年に開催された「泡パ®」を始め「喰種レストラン」「マグロハウス®」など世の中をワクワクで埋め尽くしてきた。そんな彼が2021年に思う「#楽しいが必要だ」の未来とは? さらには、インタビュー中にOOHのアイデア会議が突如スタート!必見です!

 


定型化されたイベントはつまらない。企画性こそ魅力的
 
大塚:ご無沙汰しております。2018年の「バスタブシネマ」で大変お世話になりました。イベントの仕切りはもちろん、何から何まで本当に勉強させて頂きました。
 
アフロマンス:いえいえ。今考えると「バスタブシネマ」って、ソーシャルディスタンスなイベントでしたよね。各々がバスタブに入ることで、ほどよい距離感の中で映画を観るってコロナ禍に最適なのではと改めて思ったり。
 
渋谷ど真ん中のビル屋上を映画館に変えた「バスタブシネマ」
 
人数限定で行列も無く、特別感があって参加者ひとりひとりが充実した時間を過ごせる。コロナ禍の制限の中で生まれるイベントには、面白い体験のヒントも隠されているんじゃないかと最近、思ってます。
 
大塚:確かにそうですよね。その辺も詳しく伺いたいんですが、まずは「パーティークリエイター」としての原点から聞かせて頂けますか?
 
アフロマンス:もとからパーティーやイベントに決めていたわけじゃなくて、とにかく自分が面白いと思うことをつくって提供することが好きでした。大学時代には、仲間とともに京都大学のフリーペーパー「Chot★Better」(チョットベター)を創刊して編集長をやって、今も続いています。その他にも、ミスコンを立ち上げたり、京都市の音楽フェスを手伝ったり、自身もアフロマンス名義でDJをやったりと興味があるモノを手当たり次第にやっていました。
 
大塚:そこから広告代理店へ?
 
アフロマンス:ですね。大学時代に色んなことをやったけど「これぞ」というものは決められず、色んなものを作れる可能性があると思って広告業界へ進みました。
 
同時に、趣味としてイベントの主催も続けていました。ただ、イベント以外にも映像や建築など色んなことが好きだったので、定型化されたイベントには飽きがきていました。例えば、DJするのはそもそもクラブじゃなきゃいけないのかな?とか。そして、ビルの屋上でイベントをやったり、路面電車でDJしたり、型にはまらない企画性のあるイベントが楽しくなっていきました。
 


大塚:そんな中、一躍話題になったのが「泡パ®」ですね。
 
アフロマンス:2012年ですかね。スペインのリゾート地、イビサ島に泡パーティーがあると聞いて「絶対に面白いから日本でもやろう!」という思いだけでやりました。すごい反響を受けたことでパーティークリエイターとしてやっていくきっかけになったのも事実。なんというか「自分の面白いと思うものを形にすることは価値があるのかもしれない」と思えた瞬間ですね。僕にとっては「泡パ®」は人生の一つのターニングポイントでした。
 


面白そうだからやる!そのモチベーションは誰よりも強い  
 
大塚:ちなみに新たなアイデアを生み出すコツがあれば教えて頂きたいんですが?
 
アフロマンス:う〜ん、優れた企画って自分がただやりたいとか面白いだけじゃなく、相手が喜ぶものだったり、費用対効果だったり、いろんな編み目をくぐって最終的に残ったひと搾りみたいなものだと思うんです。
 
僕自身、大学時代はすごいアイデアマンだと思っていたんですけど、広告会社に入社したら、全然そんなことなくて、企画が通らなかった。そこで何をするかというと、とにかく企画を打ちまくるんです。100案投げてダメ出しされて精査されていくうちにヒットするポイントが見出されていく。
 
例えば「イチローにホームラン打つコツはなんですか?」と聞いたとして、スイングのフォームの話もあると思うけど、結局は「毎日練習して試合に出ること」ってなると思うんです。とにかく打ちまくる!そして、打席に立つ!
 

 
でも、今の僕が企画を提案する時に100案出しているかと言えば出していないです。1個か2個ぐらい。それでも企画が通るのは抜けるポイントが分かっているから。それまでバットの素振りをめちゃくちゃやってきたからなんです。何が当たるのかを経験と共に身につけていくしかないんですよね。しかも企画会議とかじゃなくて、実践で。
 
大塚:そうやってアイデアを出しまくるモチベーションってどこにあるんでしょうか?
 
アフロマンス:これは学生時代の話になるんですけど、当時ファットボーイスリムがイギリスのブライトンで開催した巨大ビーチフェスがあったんですが、あそこでDJをやっている映像に衝撃を受けて「自分たちでやりたい!」と思っちゃったんですよね
 
でも、周りに声をかけたら「ビーチフェスが楽しいのはわかるけど、自分たちでやる必要ある?遊びに行けばよくない?」って言われたんです。たしかにその通りですよね(笑)。
 
だけど、僕は心からつくりたいと思った。それって人によって何にモチベーションを感じるかは違うって話だと思うんです。たとえば美味しいご飯は食べたいけど自分で作りたくない人もいれば、美味しいご飯を作ることにモチベーションを感じる人もいる。僕は自分でビーチフェスを作り上げることに強烈なモチベーションを感じた。
 
アイデアを生み出すコツについて誤解して欲しくないのは、僕自身、1万人が誰も思いつかないアイデアを生み出しているとは思っていません。みんなが思いついたとしても“1万人がやらないことをやっている”だけ。
 
いくらいいアイデアを思いついても、実際に動かなかったら意味が無いわけで、つまりはアイデアと実現力の両輪が大事なんです。いいアイデアは物事を進める原動力にもなるし、それに加えて実現力も必要。そのセットでどんどん経験を積んでいけば、アイデアも徐々に磨かれていくと思います。
 


壮大過ぎるビジョンで動けなくなる人は多い
 
アフロマンス:最近の若い人たちから相談を受けることも多いんですが、よく感じるのは壮大なビジョンを持ち過ぎ問題。「世界を救いたい」とか多いんですよ。でも、ゴールが壮大過ぎて、具体的に何も始められないまま諦めちゃったりするんです。
 
世界を救う前に、コロナで苦しんでいる目の前のひとつの店を救えるのか?という話。僕が思うのは、まずはできることから一回やってみる。そのうち実際やった経験やエッセンスが他でも使えるようになっていく。
 
泡パーティーだって、最初は自分たちの手作りイベントで協賛もなかった。当然、全責任も自分にある。だからこそすごく慎重になったし、そういう経験や細かい失敗があって、企画やアイデアはブラッシュアップされていく。壮大な理想で身動きがとれなくなっていないか?この数年、思い描くだけで実際、動けていないなんてことはないか?もしその状態を感じたら、まずは身近にできることから始めてみるのが打開策だと思います。
 


一番嬉しい瞬間は、喜びや感動を言葉にしてもらったとき 
 
大塚:今までいろんな企画を手掛けて一番嬉しかった瞬間は?
 
アフロマンス:本当にやって良かったと思ったのは、今年3月に故郷の鹿児島で開催した「マグマやきいも電車」ですね。
 



「マグマやきいも電車」:鹿児島市とコラボし路面電車で街を巡りながら大人気の焼き芋を食べる期間限定イベント。募集人数351人に対し応募人数約2100人超
 
アフロマンス:イベント当日も盛り上がったんですが、後々、地元の新聞に小学生からの投書があったんです。焼き芋大好きな小学生、通称「いも姉ちゃん」がお母さんにイベントを教えられて応募したら見事当選。「わたしのために開催してくれたような電車」と言ってくれました。
 
イベント当日に盛り上がるのも嬉しいんですが、正直みんな何を思っているのかはわからない。言葉じゃないと伝わらないこともあって、そんなときに投書でリアルな感想を見て、本当にやって良かったなと思いました。たぶん「いも姉ちゃん」は一生このイベントを忘れないだろうし、そういうものが作れたのかなと嬉しくなりました。
 

 
後編へ続く
 

プロフィール
 

 
体験クリエイター・DJ。クリエイティブカンパニー「Afro&Co.」代表。2012年、都内初の泡パーティーを開催し、全国に「泡パ®」ムーブメントを起こす。以降、「マグロハウス®」「BATHTUB CINEMA」などの主催に加え、数々の体験型イベントを企画。2020年コロナ禍に発信した「#楽しいが必要だ」のメッセージが大きな反響を呼び、英語、中国語、スペイン語などに翻訳され世界を席巻。「楽しい」を追求し続ける稀代のクリエイターとして精力的に活動している。
 
アフロマンスさんツイッター
@afromance
 
Afro&Co.オフィシャルHP
https://afroand.co/
 
取材・撮影場所/WIRED SHIBUYA 
https://www.cafecompany.co.jp/brands/wired_project/

取材・文/太田光洋

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