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【keyperson interview】アート集団・OVER ALLs代表兼プロデューサー・赤澤岳人氏 「正解、不正解なんてない!自分の好きなWOW!を表現すれば、仕事はもっと楽しくなる!」【前編】
SPACE MEDIAを運営するミューカ代表・大塚省伍がOOH業界を牽引するキーパーソンの方々と対談を行い、変化の激しい業界の未来を創造する特集企画。
第7回目の対談相手は、壁画やオーダーアートの企画制作、「現代のアート」のセレクトショップなどを運営する株式会社OVER ALLsの代表兼プロデューサー・赤澤岳人さん。「楽しんだって、いい」を企業理念とし、アートで「楽しい国、日本」を作ろうとする同社の取り組みが多くの企業に注目されている。――
というと、芸術大学を出た〝気鋭のアーティスト〟と思うかもしれないが、違う。赤澤さんの異色の経歴とともに、壁画アートのビジネス事情、そして「WOW!」と心を動かされたことを判断の中心に置く独自の仕事観を聞いた。
そこで働く人たちの〝何となく好き〟を集約した企業理念を壁画アートで表現
大塚:オフィスでは企業理念や歴史などを、店舗ではショップコンセプトやブランドストーリーを、壁画アートに仕上げていらっしゃいますね。設立5年目のベンチャー企業ながら、引き合いが絶えず、急成長されていますが、なぜオフィスアートという分野に注目されたのですか?
赤澤:私が小学生の頃、「好き嫌いを言うんじゃありません」とよく言われました。中高生になると髪型や服装で「学生〝らしく〟しなさい」と言われるように。でも、私は逆に「好き嫌いより大事なものはない」と思っています。最も多感な時期に、「好き」を封じ込められている日本人は、自分が感動したものを表現することが苦手になっているのです。
私はよく「HOWの〝H〟を〝W〟に変えて『WOW!』にしよう」とスタッフに伝えています。というのは、WOW! 感動したことをないがしろにして、先にHOW(方法論)、テクニカルな目線から考えてしまう人が多いのです。
そこで、依頼を受けた企業の方たちにセミナーを開き、どのような絵をオフィスに描きたいか、一緒に考える取り組みを行っています。それって普通の会議と異なり、アートの領域なので正解、不正解がありません。ただ話を重ねるうちに、会社のこんなところが好き、あんなところが頑張っている、と思うなど様々な言葉が飛び交うようになるんです。
そんな皆さんの言葉を集めて、私たちがラフスケッチを描くのですが、それを見せても当然、皆さん〝何となく〟の感想しか出てきません。それはそうですよね、正解がないのですから。
だけど、そんな機会を設けることで、自分たちの会社の企業理念を正しく感じたうえで、行動できるようになる。そうしたら絶対、仕事が楽しくなるはずなんですよ。

●制作の流れ
例えば、愛知県・名古屋市に本社を構えるトヨタコネクティッドさんでは、会社の歴史をエントランスに描きました。普通だったらクライアントとはいえ、いちいち会社の歴史を説明することはありませんよね。でもエントランスにある壁画アートによるヒストリーを見れば、自然と、「この絵は何ですか?」となる。結果、自分たちの好きを集約した企業理念を説明することになるのです。
実際、採用の場面では応募人数が3〜4倍に増えたという話も。また、具体的な数字までは開示していただけていませんが、モチベーションが一気に上がった、という報告を受けた企業もあります。



トヨタコネクティッド株式会社に納品した作品。名古屋本社の壁画には、創業時から関わったリーダーたちの歴史が描かれている。下の2点は東京事務所と沖縄事務所に描かれたものだ。
パブリックアートは分かる人だけが分かる内輪ノリでいい!
大塚:企業だけでなくパブリックな空間でも壁画アートを手掛けていらっしゃいます。最近では、東日本大震災により、全町避難となった福島県・双葉町(現在は一部地域で避難指示が解除)の「FUTABA Art District」が、その代表ですよね。
赤澤:非常にデリケートな街なので、皆さんの賛同を得たわけではありません。当然、否定的な声もありましたが、それはしかるべきことだと思っています。ただ私たちの壁画プロジェクトがスタートしてから、「俺らも何かできることをしたい」と、地元の方が会社を起こすなんてことも。まだ住民ゼロなのにですよ!

そんな動きがあることを知ると、何もしなくても誰かが批判する、何かをしても誰かが批判する。だったら周囲の人に特別な配慮をすることはなく、私はパブリックアートを描くほうを選びます。

ただ1人よがりの作品にはしません。例えば上の『ファーストペンギン』という作品は、「ペンギン」というファーストフード店に真っ赤な髪をした女性がいた、という話を聞いたので、そのお母さんをドーンと描きました。帰省してくる地元の人たちを出迎えるようなイメージです。
とんねるずさんの番組じゃないけれど、街の人しか分からない、完全な内輪ノリ。他の人に伝わりにくいじゃないか、と思うかもしれませんが、その街に描く作品なのだから、私はそれでいいと思っています。





双葉町のそこかしこに描かれている作品群。アートによる街の再生が始まっている。
大塚:他にも様々な手法があるのに、なぜ、壁画アートにこだわるのですか?
赤澤:壁画アートのいいところは、人為な要素を感じさせないこと。例えば、駅広告は掲載している商品を売りたいとか、ここに掲出すればマーケット的に成功するといった要素が見えてくる。一方で、壁は最初からそこにあるもの。もちろんアートなので誰かが描いているんだけど、元からあったかのように人は思う。
ポスターやキャンバスに描かれたものは、他発的で「伝える」になるのですが、壁画は自発的な「感じる」になる。自分たちのWOW!とか企業理念などを感じることができる装置という意味で壁画は最高の表現方法だと思いますね。
後編へ続く
プロフィール

赤澤岳人
株式会社OVER ALLs 代表取締役社長
某大手人材会社の営業職を経て、新規事業責任者として事業承継をテーマとした社内ベンチャーを設立する。退職後の2016年9月、アーティストの山本勇気氏との出会いをきっかけに同社を設立。主に企画・プロデュースを担当する。
OVER ALLs HP
http://www.overalls.jp/
赤澤岳人さんツイッター
https://twitter.com/overalls_aka
取材・文/寺田剛治
第7回目の対談相手は、壁画やオーダーアートの企画制作、「現代のアート」のセレクトショップなどを運営する株式会社OVER ALLsの代表兼プロデューサー・赤澤岳人さん。「楽しんだって、いい」を企業理念とし、アートで「楽しい国、日本」を作ろうとする同社の取り組みが多くの企業に注目されている。――
というと、芸術大学を出た〝気鋭のアーティスト〟と思うかもしれないが、違う。赤澤さんの異色の経歴とともに、壁画アートのビジネス事情、そして「WOW!」と心を動かされたことを判断の中心に置く独自の仕事観を聞いた。
そこで働く人たちの〝何となく好き〟を集約した企業理念を壁画アートで表現
大塚:オフィスでは企業理念や歴史などを、店舗ではショップコンセプトやブランドストーリーを、壁画アートに仕上げていらっしゃいますね。設立5年目のベンチャー企業ながら、引き合いが絶えず、急成長されていますが、なぜオフィスアートという分野に注目されたのですか?
赤澤:私が小学生の頃、「好き嫌いを言うんじゃありません」とよく言われました。中高生になると髪型や服装で「学生〝らしく〟しなさい」と言われるように。でも、私は逆に「好き嫌いより大事なものはない」と思っています。最も多感な時期に、「好き」を封じ込められている日本人は、自分が感動したものを表現することが苦手になっているのです。
私はよく「HOWの〝H〟を〝W〟に変えて『WOW!』にしよう」とスタッフに伝えています。というのは、WOW! 感動したことをないがしろにして、先にHOW(方法論)、テクニカルな目線から考えてしまう人が多いのです。
そこで、依頼を受けた企業の方たちにセミナーを開き、どのような絵をオフィスに描きたいか、一緒に考える取り組みを行っています。それって普通の会議と異なり、アートの領域なので正解、不正解がありません。ただ話を重ねるうちに、会社のこんなところが好き、あんなところが頑張っている、と思うなど様々な言葉が飛び交うようになるんです。
そんな皆さんの言葉を集めて、私たちがラフスケッチを描くのですが、それを見せても当然、皆さん〝何となく〟の感想しか出てきません。それはそうですよね、正解がないのですから。
だけど、そんな機会を設けることで、自分たちの会社の企業理念を正しく感じたうえで、行動できるようになる。そうしたら絶対、仕事が楽しくなるはずなんですよ。
●制作の流れ

①トークショー形式でオフィスにアートを導入する意味を探るセミナーを開催。

②そこで働くスタッフのリアルな声を聞くために、ヒアリング。

③スタッフの抽象的なイメージも余すことなく、ラフスケッチでビジュアル化。

④ディスカッションを行い、会社の企業理念について理解を深める。

⑤壁画作成。一緒に作り込んだアートは、スタッフにとっても特別なものに。
実際、採用の場面では応募人数が3〜4倍に増えたという話も。また、具体的な数字までは開示していただけていませんが、モチベーションが一気に上がった、という報告を受けた企業もあります。



トヨタコネクティッド株式会社に納品した作品。名古屋本社の壁画には、創業時から関わったリーダーたちの歴史が描かれている。下の2点は東京事務所と沖縄事務所に描かれたものだ。
パブリックアートは分かる人だけが分かる内輪ノリでいい!
大塚:企業だけでなくパブリックな空間でも壁画アートを手掛けていらっしゃいます。最近では、東日本大震災により、全町避難となった福島県・双葉町(現在は一部地域で避難指示が解除)の「FUTABA Art District」が、その代表ですよね。
赤澤:非常にデリケートな街なので、皆さんの賛同を得たわけではありません。当然、否定的な声もありましたが、それはしかるべきことだと思っています。ただ私たちの壁画プロジェクトがスタートしてから、「俺らも何かできることをしたい」と、地元の方が会社を起こすなんてことも。まだ住民ゼロなのにですよ!
そんな動きがあることを知ると、何もしなくても誰かが批判する、何かをしても誰かが批判する。だったら周囲の人に特別な配慮をすることはなく、私はパブリックアートを描くほうを選びます。

ただ1人よがりの作品にはしません。例えば上の『ファーストペンギン』という作品は、「ペンギン」というファーストフード店に真っ赤な髪をした女性がいた、という話を聞いたので、そのお母さんをドーンと描きました。帰省してくる地元の人たちを出迎えるようなイメージです。
とんねるずさんの番組じゃないけれど、街の人しか分からない、完全な内輪ノリ。他の人に伝わりにくいじゃないか、と思うかもしれませんが、その街に描く作品なのだから、私はそれでいいと思っています。





双葉町のそこかしこに描かれている作品群。アートによる街の再生が始まっている。
大塚:他にも様々な手法があるのに、なぜ、壁画アートにこだわるのですか?
赤澤:壁画アートのいいところは、人為な要素を感じさせないこと。例えば、駅広告は掲載している商品を売りたいとか、ここに掲出すればマーケット的に成功するといった要素が見えてくる。一方で、壁は最初からそこにあるもの。もちろんアートなので誰かが描いているんだけど、元からあったかのように人は思う。
ポスターやキャンバスに描かれたものは、他発的で「伝える」になるのですが、壁画は自発的な「感じる」になる。自分たちのWOW!とか企業理念などを感じることができる装置という意味で壁画は最高の表現方法だと思いますね。
後編へ続く
プロフィール
赤澤岳人
株式会社OVER ALLs 代表取締役社長
某大手人材会社の営業職を経て、新規事業責任者として事業承継をテーマとした社内ベンチャーを設立する。退職後の2016年9月、アーティストの山本勇気氏との出会いをきっかけに同社を設立。主に企画・プロデュースを担当する。
OVER ALLs HP
http://www.overalls.jp/
赤澤岳人さんツイッター
https://twitter.com/overalls_aka
取材・文/寺田剛治
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【表参道】OMOTESANDO STREET WALL 長期プラン
表参道ヒルズの向かいに大きくビジュアルを掲出することができます。
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【表参道】OMOTESANDO STREET BOARD
表参道の中心地に目線の高さで大きくビジュアルを掲出することできます。
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