OOHニュース
「街をメディア化する」六本木のイメージを変えた「文化都心」の戦略 森ビル株式会社
六本木ヒルズは、バブル後の都市開発を牽引した一大プロジェクトであり、六本木の街を地形から変えた森ビルの象徴的存在だ。敷地面積約11ヘクタールを有する巨大複合施設に、誰もが知るマスメディアや文化施設が集結。
もはや一つの「街」として機能するランドマークに、四季折々、毎年約4,000万人の老若男女が訪れる。多面性の極みともいえる六本木ヒルズは、街全体をメディア化することでどのような役割を担い、その価値を高めているのだろうか。
都会の空間に多層的に積み上げられた「文化都心」
大塚:六本木ヒルズは来年で開業20周年ですね。改めて施設の特徴を教えていただけますか?
土井:まず、森ビルの街づくりの思想に「ヴァーティカル・ガーデンシティ(立体緑園都市)」というものがあります。敷地に制限のある都心部において、空や地下など空間を立体的重層的に組み込み、職、住、遊、商、学、憩、文化、交流など多彩な都市機能を作り上げるという考え方です。これに基づき、「文化都心」をキーワードとしながら六本木ヒルズは開発されました。
大塚:聞きなれない言葉ですが、「文化都心」とは?
土井:アートやファッション、エンターテイメントなど、さまざまな文化の発信拠点を意味しています。例えば、六本木ヒルズの最上階には森美術館と展望台があります。不動産の観点で考えれば、本来なら最上階は最も高い賃料で貸せるのですが、あえて美術館という文化性の高い施設を配置しています。
複合用途の施設を立体的に運営し、情報発信をしていくことが六本木ヒルズの使命だと考えています。
大塚:確かに、テレビ局やラジオ局もあり、文化や情報が集約していると言えますね。広告媒体としてはどういった特徴があるのでしょうか。
土井:六本木ヒルズはオープン当時から「街をメディア化していく」ことを目標に掲げています。既存のマスメディアも含め、街そのものをメディアとしてとらえ、ハードとソフトの両輪で街づくりを進めているんです。
大塚:「街をメディア化する」とは、具体的にはどのように?
土井:まずは人が集まらないと広告価値が生まれませんので、街づくりをする上でブランディングを意識し、コミュニケーション活動・プロモーション活動を行っています。
春まつり・夏まつり、秋にはファッション系イベント、冬にはイルミネーション、さらに六本木エリア全体で開催する「六本木アートナイト」など、絶えずイベントや情報発信を仕掛けることで多くのお客様がいらっしゃいます。
そうしたお客様に向けてプロモーションイベントを多種多様な企業に展開していただき、そこでマネタイズした分をさらに街のブランディングのための仕掛けに還元していくというサイクルで構成しています。開業以来、広告主様と様々なプロモーション展開をご一緒していく中で、メディアとしての街の価値は年々増していると感じています。
大塚:施設自体にコンテンツを組み込み、集客しているんですね。来館者の年齢層はおいくつくらいですか?
土井:メインとなるのは30代以上の方ですが、夏にはキャラクターショーを観にご家族連れがお見えになったり、イルミネーションイベントのある冬には若年層のカップルが増えたりと、季節によって変化があります。上映している映画や開催される展覧会などによっても変わってきますね。
大塚:人の動きをある程度予測できるので、広告主としてはプランが立てやすいですね。六本木は国際的な街でもあると思いますが、海外のお客様はいかがですか?
土井:そうですね。短期でレジデンスに入居している外資系企業のワーカーさんや、ホテルに宿泊されている方も一定数いらっしゃいます。インバウンドの落ち込みはあまり影響していません。
一元管理で純度の高いブランディングが可能
大塚:六本木ヒルズ内には複数のメディアがあると思いますが、やはり注目は「メトロハット」ですか?
土井:はい。メトロハットは当社の主力商品でして、外周、内周どちらか単体でも、組み合わせでもご利用いただけます。内側のセンターバナー、さらに通行人の目線の高さにあるアートボードとも連携できます。
「水景/キャノピー柱」や「大屋根プラザ」などと組み合わせる事例も多いです。広告が掲出されていない期間はガラス張りの建築意匠としてもきちんと成り立つので、街の景観を損なわないという特徴もあります。
大塚:どういったクライアントの出稿が多いですか?
土井:近年ですと外資系の企業様、特にハイブランドや車メーカーが多いですね。
六本木ヒルズの玄関口を飾る「メトロハット」
施設内の主要な動線上に位置するオープンスペース「大屋根プラザ」
大塚:各社どのような理由で六本木ヒルズを選んでいるのでしょうか。
土井:六本木ヒルズの敷地内には複数の施設があるのですが、街として統一感を保つために運営管理を一元化しています。それにより競合調整もでき、洗練された空間に安心して広告を出稿していただける「ブランドセーフティーな街」という点などを評価いただいていると感じています。
大塚:なるほど。都心の大型メディアでありながら、OOHの課題である競合問題がクリアになるわけですね。
ターゲットの期待や感動を高める大規模プロモーション
大塚:六本木ヒルズには映画館が入っていますが、エンタメ系のプロモーションはいかがですか?
土井:おっしゃるように、映画の公開に合わせたプロモーションや、「六本木ヒルズアリーナ」でレッドカーペットイベントが行われるなど、TOHOシネマズと連動した展開にもご利用いただいています。
最近では映画『えんとつ町のプペル』の大型プロジェクトが話題になりました。
クラウドファンディングで資金調達したことでも話題になった『えんとつ町のプペル』プロモーション
大塚:観客のワクワク感を刺激する展開ができそうですね。では、六本木ヒルズにしかできないプロモーションとはどのようなものでしょう?
土井:複数の大型メディアやイベントスペースを活用し、街全体をジャックできるという点が最大のメリットだと思います。リアルイベントとメディアを組み合わせることで、より訴求力の高い展開が可能です。
大塚:大規模な事例ではどのようなものがありましたか?
土井:アテネオリンピックのときに、各競技の世界記録を体感できるコーナーを六本木ヒルズ内の各所に設置して一体感を高めるプロジェクトがありました。他にもサッカーやラグビーのW杯に合わせたタイミングで、大会のスポンサー企業やスポーツブランド様が街全体を使ったプロモーションにご利用くださいました。
2019年ラグビーワールドカップに連動し、スポンサー企業が出稿
大塚:国民的イベントと連動することで、媒体の注目度も高まりそうですね。
土井:そうですね。クライアント側でも情報発信してくださり、写真を撮りにいらっしゃる方も大変多かったです。それから、NTTドコモ様が実施したメトロハットのクリエイティブとARを組み合わせたプロモーションでは、最先端技術を使った広告展開として注目され、六本木ヒルズ自体のブランディングにつながりましたね。
大塚:コロナの影響はいかがですか?
土井:イベントスペースの稼働は当然影響を受けましたが、反面、メトロハットのような大型メディアについては堅調に推移しています。
特に、昨年のクリスマス期については、六本木ヒルズの来街者数もコロナ前の状況を超える日があるほどの賑わいを見せ、売上がコロナ前の昨対比を超えたというテナント店舗もあります。
お客様はやはりリアルな体験や行動を求めていると改めて実感しました。感染対策についてはいち早くルールをしっかり策定し、施設内のメディアを使って告知しました。
大塚:そうなんですか。これからがますます楽しみですね。最後に、六本木という街全体を俯瞰して、今後の展望をお聞かせください。
土井:六本木ヒルズを皮切りに、付近には東京ミッドタウン、国立新美術館がオープンし、これに伴いアートギャラリーも増えました。2009年からは東京都主催の「六本木アートナイト」も始まりました。
「夜の街」というイメージが強かった六本木が文化の発信拠点として認知されるようになったのは、「文化都心」として地道に取り組んできた成果の一つと自負しています。今後も六本木は都市間競争に打ち勝つための大きな役割を果たしていく街ですので、引き続き文化の発信拠点として邁進していきたいと思います。
プロフィール
森ビル株式会社 タウンマネジメント事業部 運営部
メディア事業企画グループ チームリーダー
土井 岳史
取材・文/大貫翔子
もはや一つの「街」として機能するランドマークに、四季折々、毎年約4,000万人の老若男女が訪れる。多面性の極みともいえる六本木ヒルズは、街全体をメディア化することでどのような役割を担い、その価値を高めているのだろうか。
都会の空間に多層的に積み上げられた「文化都心」
大塚:六本木ヒルズは来年で開業20周年ですね。改めて施設の特徴を教えていただけますか?
土井:まず、森ビルの街づくりの思想に「ヴァーティカル・ガーデンシティ(立体緑園都市)」というものがあります。敷地に制限のある都心部において、空や地下など空間を立体的重層的に組み込み、職、住、遊、商、学、憩、文化、交流など多彩な都市機能を作り上げるという考え方です。これに基づき、「文化都心」をキーワードとしながら六本木ヒルズは開発されました。
大塚:聞きなれない言葉ですが、「文化都心」とは?
土井:アートやファッション、エンターテイメントなど、さまざまな文化の発信拠点を意味しています。例えば、六本木ヒルズの最上階には森美術館と展望台があります。不動産の観点で考えれば、本来なら最上階は最も高い賃料で貸せるのですが、あえて美術館という文化性の高い施設を配置しています。
複合用途の施設を立体的に運営し、情報発信をしていくことが六本木ヒルズの使命だと考えています。
大塚:確かに、テレビ局やラジオ局もあり、文化や情報が集約していると言えますね。広告媒体としてはどういった特徴があるのでしょうか。
土井:六本木ヒルズはオープン当時から「街をメディア化していく」ことを目標に掲げています。既存のマスメディアも含め、街そのものをメディアとしてとらえ、ハードとソフトの両輪で街づくりを進めているんです。
大塚:「街をメディア化する」とは、具体的にはどのように?
土井:まずは人が集まらないと広告価値が生まれませんので、街づくりをする上でブランディングを意識し、コミュニケーション活動・プロモーション活動を行っています。
春まつり・夏まつり、秋にはファッション系イベント、冬にはイルミネーション、さらに六本木エリア全体で開催する「六本木アートナイト」など、絶えずイベントや情報発信を仕掛けることで多くのお客様がいらっしゃいます。
そうしたお客様に向けてプロモーションイベントを多種多様な企業に展開していただき、そこでマネタイズした分をさらに街のブランディングのための仕掛けに還元していくというサイクルで構成しています。開業以来、広告主様と様々なプロモーション展開をご一緒していく中で、メディアとしての街の価値は年々増していると感じています。
大塚:施設自体にコンテンツを組み込み、集客しているんですね。来館者の年齢層はおいくつくらいですか?
土井:メインとなるのは30代以上の方ですが、夏にはキャラクターショーを観にご家族連れがお見えになったり、イルミネーションイベントのある冬には若年層のカップルが増えたりと、季節によって変化があります。上映している映画や開催される展覧会などによっても変わってきますね。
大塚:人の動きをある程度予測できるので、広告主としてはプランが立てやすいですね。六本木は国際的な街でもあると思いますが、海外のお客様はいかがですか?
土井:そうですね。短期でレジデンスに入居している外資系企業のワーカーさんや、ホテルに宿泊されている方も一定数いらっしゃいます。インバウンドの落ち込みはあまり影響していません。
一元管理で純度の高いブランディングが可能
大塚:六本木ヒルズ内には複数のメディアがあると思いますが、やはり注目は「メトロハット」ですか?
土井:はい。メトロハットは当社の主力商品でして、外周、内周どちらか単体でも、組み合わせでもご利用いただけます。内側のセンターバナー、さらに通行人の目線の高さにあるアートボードとも連携できます。
「水景/キャノピー柱」や「大屋根プラザ」などと組み合わせる事例も多いです。広告が掲出されていない期間はガラス張りの建築意匠としてもきちんと成り立つので、街の景観を損なわないという特徴もあります。
大塚:どういったクライアントの出稿が多いですか?
土井:近年ですと外資系の企業様、特にハイブランドや車メーカーが多いですね。
六本木ヒルズの玄関口を飾る「メトロハット」
施設内の主要な動線上に位置するオープンスペース「大屋根プラザ」
大塚:各社どのような理由で六本木ヒルズを選んでいるのでしょうか。
土井:六本木ヒルズの敷地内には複数の施設があるのですが、街として統一感を保つために運営管理を一元化しています。それにより競合調整もでき、洗練された空間に安心して広告を出稿していただける「ブランドセーフティーな街」という点などを評価いただいていると感じています。
大塚:なるほど。都心の大型メディアでありながら、OOHの課題である競合問題がクリアになるわけですね。
ターゲットの期待や感動を高める大規模プロモーション
大塚:六本木ヒルズには映画館が入っていますが、エンタメ系のプロモーションはいかがですか?
土井:おっしゃるように、映画の公開に合わせたプロモーションや、「六本木ヒルズアリーナ」でレッドカーペットイベントが行われるなど、TOHOシネマズと連動した展開にもご利用いただいています。
最近では映画『えんとつ町のプペル』の大型プロジェクトが話題になりました。
クラウドファンディングで資金調達したことでも話題になった『えんとつ町のプペル』プロモーション
大塚:観客のワクワク感を刺激する展開ができそうですね。では、六本木ヒルズにしかできないプロモーションとはどのようなものでしょう?
土井:複数の大型メディアやイベントスペースを活用し、街全体をジャックできるという点が最大のメリットだと思います。リアルイベントとメディアを組み合わせることで、より訴求力の高い展開が可能です。
大塚:大規模な事例ではどのようなものがありましたか?
土井:アテネオリンピックのときに、各競技の世界記録を体感できるコーナーを六本木ヒルズ内の各所に設置して一体感を高めるプロジェクトがありました。他にもサッカーやラグビーのW杯に合わせたタイミングで、大会のスポンサー企業やスポーツブランド様が街全体を使ったプロモーションにご利用くださいました。
2019年ラグビーワールドカップに連動し、スポンサー企業が出稿
大塚:国民的イベントと連動することで、媒体の注目度も高まりそうですね。
土井:そうですね。クライアント側でも情報発信してくださり、写真を撮りにいらっしゃる方も大変多かったです。それから、NTTドコモ様が実施したメトロハットのクリエイティブとARを組み合わせたプロモーションでは、最先端技術を使った広告展開として注目され、六本木ヒルズ自体のブランディングにつながりましたね。
大塚:コロナの影響はいかがですか?
土井:イベントスペースの稼働は当然影響を受けましたが、反面、メトロハットのような大型メディアについては堅調に推移しています。
特に、昨年のクリスマス期については、六本木ヒルズの来街者数もコロナ前の状況を超える日があるほどの賑わいを見せ、売上がコロナ前の昨対比を超えたというテナント店舗もあります。
お客様はやはりリアルな体験や行動を求めていると改めて実感しました。感染対策についてはいち早くルールをしっかり策定し、施設内のメディアを使って告知しました。
大塚:そうなんですか。これからがますます楽しみですね。最後に、六本木という街全体を俯瞰して、今後の展望をお聞かせください。
土井:六本木ヒルズを皮切りに、付近には東京ミッドタウン、国立新美術館がオープンし、これに伴いアートギャラリーも増えました。2009年からは東京都主催の「六本木アートナイト」も始まりました。
「夜の街」というイメージが強かった六本木が文化の発信拠点として認知されるようになったのは、「文化都心」として地道に取り組んできた成果の一つと自負しています。今後も六本木は都市間競争に打ち勝つための大きな役割を果たしていく街ですので、引き続き文化の発信拠点として邁進していきたいと思います。
プロフィール
森ビル株式会社 タウンマネジメント事業部 運営部
メディア事業企画グループ チームリーダー
土井 岳史
取材・文/大貫翔子
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