【展覧会レポート】国立新美術館 「佐藤可士和展」開催【前編】

クリエイティブディレクター・佐藤可士和氏の個展「佐藤可士和展」が、2021年2月3日〜5月10日まで国立新美術館（東京・六本木）で開催されている。
 
1989年の博報堂入社から、2000年の独立およびクリエイティブスタジオ・SAMURAI設立を経て、現在に至るまで、広告戦略を含むクリエイティブディレクションのトップランナーとして走り続ける佐藤氏。その30年以上にわたるアートワークを網羅的に展示するのが今回の展覧会だ。
 
会場は、6つのセクションに分かれる。幼少期のコラージュ作品「宇宙」や、博報堂入社直後に初めてコンピュータでデザインした作品「6 ICONS」が飾られる始まりのセクション「THE SPACE WITHIN」を抜けると、屋外広告をメインでフィーチャーしたセクション「ADVERTISING AND BEYOND」が、眼前に広がる。
 







 
佐藤氏は、人々の目に触れるものすべてがデザイン次第で情報伝達の有効な手段になると考え、早くからOOHに注力していたという。
 
本セクションでは、90年代後半～00年代に佐藤氏が手掛けたプロジェクトから誕生したビルボードや駅の連貼りポスターとなどの屋外広告の傑作が、発表時の迫力あるスケール感そのままに、キャンペーン用のグッズとともに並ぶ。
 
 






その中には、最初の転機となったホンダのミニバン「ステップワゴン」のポスターも。この広告プロジェクトをきっかけに佐藤氏は、「自分が主役ではなくブランドが主役」という観点のもと、クリエイターとしてのエゴを捨て、社会に対してコミュニケーションするデザインに目覚めたという。そんなエポックメイキングなポスターは、必見の価値ありだ。
 

 
続いてのセクションは、広大なスペースを贅沢に使用し、企業やサービスの巨大ロゴが展示される「THE LOGO」。「楽天」や「ユニクロ」「T-POINT」「セブンプレミアム」など、佐藤氏が手掛けたロゴはいずれも、簡潔さと明瞭さを兼備している。
 








シンプルを極めるこれらのロゴだが、実は、綿密な設計図に基づきデザインされているとのこと。比率が徹底的に計算されているからこそ、どれだけ縮小されようが、拡大されようがブレがない。
 
スマホのアイコンサイズでも、1つあたり数メートル四方の巨大サイズでも印象が均一なのだ。「THE LOGO」で、そんな佐藤氏が手掛けるロゴの奥深さを、体感できるエリアとなる。
 


また、今治タオルのロゴがタオル地で作られていたり、LDHのロゴがステージを模していたりと、本展覧会ならではの遊び心とこだわりが施されているのもポイントだ。
 

 

後編へ続く
 

【開催概要】
■会場：国立新美術館 企画展示室１E
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
https://www.nact.jp
 
■アクセス：
東京メトロ千代田線
乃木坂駅 青山霊園方面改札6出口（美術館直結）
東京メトロ日比谷線
六本木駅 4a出口から徒歩約5分
都営地下鉄大江戸線
六本木駅 7出口から徒歩約4分
※美術館に駐車場はない。
 
■会期：2021年2月3日（水） － 5月10日（月）
■休館日：毎週火曜日
※ただし、5月4日（火・祝）は開館
■開館時間：10:00 － 18:00（毎週金・土曜日は20:00まで）
※入場は閉館の30分前まで
※開館時間は変更になる場合がある
 
■主催：国立新美術館／SAMURAI／TBSグロウディア／BS-TBS／朝日新聞社／TBSラジオ／TBS
■共催：ぴあ
■特別協賛：ユニクロ／楽天／日清食品
■協賛：
セブン＆アイ・ホールディングス／ヤンマーホールディングス／UR都市機構
エイブル＆パートナーズ／ワイマラマジャパン／LDH JAPAN／くら寿司
クレアプランニング／コナカ／千里リハビリテーション病院／DDホールディングス
ビューティーエクスペリエンス／三井物産／丹青社／丹青ディスプレイ／日本GLP／NISSHA
カシオ計算機／グローブライド／ナスタ／Honda／エー・ピーホールディングス
山下PMC／三輪山本／OCHABI／青木酒造／伊丹産業／カネボウ化粧品／キリンビール
山形緞通／カルチュア・コンビニエンス・クラブ／明治学院大学
■協力：今治タオル工業組合／KIHARA／クロススポーツマーケティング／慶應義塾大学／光和
国際空手道連盟極真会館／大洋印刷／武田薬品工業／ふじようちえん
エイベックス･エンタテインメント
■後援：佐賀県／有田町
■問い合わせ先：03-5777-8600（ハローダイヤル）
■展覧会ホームページ：https://kashiwasato2020.com/
 


取材・文／小島浩平