OOHニュース
スマホ端末の位置情報等を活用し、OOHの効果を〝見える化〟 LIVE BOARD・現王園章太【後編】
これまで人流が多いエリアありきが売り文句だったOOH業界。そこに一石を投じたのが、2019年にNTTドコモと電通が共同出資して立ち上げた株式会社LIVE BOARD(以下、LIVE BOARD)。
スマホ端末の位置情報等※からスクリーンの広告視認者数(インプレッション)をクライアントに提示することで、OOHのPDCA(Plan→Do→Check→Action)サイクルを回すことに注力している同社の取り組みについて、クライアントサービス部の現王園章太氏に聞いた。
※利用者の個人情報が特定されない統計的な情報として配慮されています
前編はこちら
イギリスで学んだOOHのPDCAサイクル
大塚:現在、LIVE BOARDはプログラマティックOOHのパイオニアともいえますが、世界では どのような状況なのでしょうか?
現王園:ProgrammaticOOHは世界的なトレンドになっています。私は2019年から2021年の4月までイギリスのOOH専門の広告会社Posterscopeにて働いていたのですが、欧米ではOOHキャンペーンにおいてもPDCAサイクルを回すという点をものすごく意識しています。まず仮説を立ててプランニングし、実践して、次のアクションにつなげています。
大塚:どのような実例を見られましたか?
現王園:また、OOH広告をひとまとめにするのではなく、街、駅にあるものに加えて、居酒屋やオフィスにあるスクリーンなど、様々な設置環境にあるメディアを試します。どの場所に、何曜日に広告を出すとスポーツジムに来てくれる可能性が高いか、出稿パターンに応じた変化を検証しているのです。
大塚:データの精度に関してはどうなんでしょうか?
現王園:取得できるデータの量や精度に関しては、日本のほうが進んでいると思っています。そもそも国によって個人情報の取り方も、得られるデータも異なります。イギリスがこのような先進的なOOHキャンペーンを実現できるのは、OOHを〝出しっぱなし〟で終わらせるのではなく、仮説を立ててしっかり検証するという基本姿勢が備わっているからだと思います。グローバルな視点でOOH広告を見たとき、PDCAサイクルを回すということが、いかに大事なのかと実感しました。
大塚:そうしたイギリスで行なわれているOOH広告のPDCAサイクルは、一朝一夕でできるものではないと思うのですが、いつからその傾向が見られるようになったのでしょうか?
現王園:実は2019年までの約10年間で、イギリスのOOH市場は約1.5倍に成長しています。非常に好調だった要因は、やはりPDCAサイクルを回すという意識がかなり強かったからだと思います。
大塚:一方、日本はずっと横ばいでまったく伸びていませんね。
現王園:その点に課題意識と危機感を強く感じています。イギリスの動向を見てきた中で、LIVE BOARDがチャレンジしている取り組みは間違っていないと思っています。とはいっても、様々なデータをクライアントに提示できるからといって、すぐに購入してくれるわけでもない。
今売れているOOH媒体は渋谷を中心として、SNSでの拡散を狙ったインパクト系のメディアだと思うのですが、車内ビジョンなどのネットワーク系媒体は苦しんでいる状態です。LIVEBOARDも同様です。ネットワーク系媒体の需要を回復させるにはデータを用いてPDCAサイクルを回せなければならないと思います。コロナ禍の中で苦しい状況ですが、LIVE BOARDが取り組み続けているOOH広告の価値の可視化。は必要だと確信をしています。
大塚:弊社も媒体を持っているのですが、インサイトマーケティングのデータというのは、近々導入しないといけないな、とは思っています。ポスターひとつでも、どんな人が見てくれているかーーということをクライアントに証明しなくてはいけないと思っています。
現王園:コロナ禍になって一つだけ、OOH業界にとって良かったことがあると思っています。それは毎日、スクランブル交差点などの人流がニュースになっていることです。広告業界の人やWebサイトを運営している人でなければ、デイリーでトラフィックデータを確認するということは少なかったのではないかと思っています。コロナ禍で多くの人が、データが日毎に作られるものであり、それを確認できるということを実感したと思っています。
大塚:そうですね。もう「1年前のデータですけれど……」というのは通用しなくなりますね。
現王園:また、デジタル広告事業者さんと連携していくことも重要だと思っています。何が目的かというと、デジタル広告が伸びている今、デジタル広告側の入り口からOOHに広告を出稿してもらうーーつまり、販路を広げることができるからです。
若者をワクワクさせるようなOOHを作りたい!
大塚:メリットがなければデジタル広告側は連携しないと思いますが?
現王園:OOH広告を配信した時にWebサイトに来訪がどれくらい増えたか、アプリをインストールしたか。といった点を見える化できれば、協業できると思っています。実現にはいくつか課題があるのですが、クリアするべく日々試行錯誤しています。
大塚:日本におけるOOHの新しいスタイルを聞かせていただきましたが、さらなる次の一手は、どのように考えていらっしゃいますか?
現王園:イギリスのOOH業界では、若い人が活躍していました。20代後半で数人のチームをまとめるマネージャーを務めるのが当たり前だったので、 それに比べると日本は年齢層が高い。だからこの業界に若い人たちにチャレンジしたいと思ってもらえるよう、「こんな面白いことができるメディアなんだ」「働いてみたい!」とワクワクさせられるよう、様々なカタチのOOHを作っていきたいと思っています。
大塚:使命感を持っていらっしゃるのが素晴らしいですね。確かに、OOHは単なる看板じゃない! と若者に興味を持ってもらうことがOOH業界の発展につながるのは間違いありませんね。
プロフィール
現王園章太
株式会社LIVE BOARD
クライアントサービス部
広告代理店の電通で屋外広告と交通広告を中心とした業務に8年間携わりつつ、2021年4月までイギリスのOOHグローバルエージェンシーPosterscopeに出向し、OOHの仕事を学ぶ。その後、NTTドコモと電通の共同出資で新設された株式会社 LIVE BOARDに入社し、OOHを起点としたマーケティングを実践している。
株式会社 LIVE BOARD サービスサイト
https://service.liveboard.co.jp/
株式会社LIVE BOARD コーポレートサイト
https://liveboard.co.jp/
現王園章太さんツイッター
https://twitter.com/gennozono
現王園章太さん関連記事
https://space-media.jp/news/detail/2707/
https://space-media.jp/news/detail/2681/
取材・文/寺田剛治
スマホ端末の位置情報等※からスクリーンの広告視認者数(インプレッション)をクライアントに提示することで、OOHのPDCA(Plan→Do→Check→Action)サイクルを回すことに注力している同社の取り組みについて、クライアントサービス部の現王園章太氏に聞いた。
※利用者の個人情報が特定されない統計的な情報として配慮されています
前編はこちら
イギリスで学んだOOHのPDCAサイクル
大塚:現在、LIVE BOARDはプログラマティックOOHのパイオニアともいえますが、世界では どのような状況なのでしょうか?
現王園:ProgrammaticOOHは世界的なトレンドになっています。私は2019年から2021年の4月までイギリスのOOH専門の広告会社Posterscopeにて働いていたのですが、欧米ではOOHキャンペーンにおいてもPDCAサイクルを回すという点をものすごく意識しています。まず仮説を立ててプランニングし、実践して、次のアクションにつなげています。
大塚:どのような実例を見られましたか?
現王園:例えば、デジタル広告とOOH広告を同時に実施したというスポーツジムの一例なのですが、早朝のまだ自宅にいる時間帯はデジタル広告、8〜10時くらいまでの通勤時間帯は街でOOH広告を、ランチタイムとなるお昼はスマホで見られるデジタル広告、帰宅時間はOOH、自宅でネットサーフィンなどを楽しむ夜の時間帯は再デジタル広告を出す。というように、OOHの広告枠をインターネット広告同様に細分化し、生活動線の中で、媒体をうまく使い分けながら広告キャンペーンを行なっていました。
現王園:また、OOH広告をひとまとめにするのではなく、街、駅にあるものに加えて、居酒屋やオフィスにあるスクリーンなど、様々な設置環境にあるメディアを試します。どの場所に、何曜日に広告を出すとスポーツジムに来てくれる可能性が高いか、出稿パターンに応じた変化を検証しているのです。
大塚:データの精度に関してはどうなんでしょうか?
現王園:取得できるデータの量や精度に関しては、日本のほうが進んでいると思っています。そもそも国によって個人情報の取り方も、得られるデータも異なります。イギリスがこのような先進的なOOHキャンペーンを実現できるのは、OOHを〝出しっぱなし〟で終わらせるのではなく、仮説を立ててしっかり検証するという基本姿勢が備わっているからだと思います。グローバルな視点でOOH広告を見たとき、PDCAサイクルを回すということが、いかに大事なのかと実感しました。
大塚:そうしたイギリスで行なわれているOOH広告のPDCAサイクルは、一朝一夕でできるものではないと思うのですが、いつからその傾向が見られるようになったのでしょうか?
現王園:実は2019年までの約10年間で、イギリスのOOH市場は約1.5倍に成長しています。非常に好調だった要因は、やはりPDCAサイクルを回すという意識がかなり強かったからだと思います。
大塚:一方、日本はずっと横ばいでまったく伸びていませんね。
現王園:その点に課題意識と危機感を強く感じています。イギリスの動向を見てきた中で、LIVE BOARDがチャレンジしている取り組みは間違っていないと思っています。とはいっても、様々なデータをクライアントに提示できるからといって、すぐに購入してくれるわけでもない。
今売れているOOH媒体は渋谷を中心として、SNSでの拡散を狙ったインパクト系のメディアだと思うのですが、車内ビジョンなどのネットワーク系媒体は苦しんでいる状態です。LIVEBOARDも同様です。ネットワーク系媒体の需要を回復させるにはデータを用いてPDCAサイクルを回せなければならないと思います。コロナ禍の中で苦しい状況ですが、LIVE BOARDが取り組み続けているOOH広告の価値の可視化。は必要だと確信をしています。
大塚:弊社も媒体を持っているのですが、インサイトマーケティングのデータというのは、近々導入しないといけないな、とは思っています。ポスターひとつでも、どんな人が見てくれているかーーということをクライアントに証明しなくてはいけないと思っています。
現王園:コロナ禍になって一つだけ、OOH業界にとって良かったことがあると思っています。それは毎日、スクランブル交差点などの人流がニュースになっていることです。広告業界の人やWebサイトを運営している人でなければ、デイリーでトラフィックデータを確認するということは少なかったのではないかと思っています。コロナ禍で多くの人が、データが日毎に作られるものであり、それを確認できるということを実感したと思っています。
大塚:そうですね。もう「1年前のデータですけれど……」というのは通用しなくなりますね。
現王園:また、デジタル広告事業者さんと連携していくことも重要だと思っています。何が目的かというと、デジタル広告が伸びている今、デジタル広告側の入り口からOOHに広告を出稿してもらうーーつまり、販路を広げることができるからです。
若者をワクワクさせるようなOOHを作りたい!
大塚:メリットがなければデジタル広告側は連携しないと思いますが?
現王園:OOH広告を配信した時にWebサイトに来訪がどれくらい増えたか、アプリをインストールしたか。といった点を見える化できれば、協業できると思っています。実現にはいくつか課題があるのですが、クリアするべく日々試行錯誤しています。
大塚:日本におけるOOHの新しいスタイルを聞かせていただきましたが、さらなる次の一手は、どのように考えていらっしゃいますか?
現王園:イギリスのOOH業界では、若い人が活躍していました。20代後半で数人のチームをまとめるマネージャーを務めるのが当たり前だったので、 それに比べると日本は年齢層が高い。だからこの業界に若い人たちにチャレンジしたいと思ってもらえるよう、「こんな面白いことができるメディアなんだ」「働いてみたい!」とワクワクさせられるよう、様々なカタチのOOHを作っていきたいと思っています。
大塚:使命感を持っていらっしゃるのが素晴らしいですね。確かに、OOHは単なる看板じゃない! と若者に興味を持ってもらうことがOOH業界の発展につながるのは間違いありませんね。
プロフィール
現王園章太
株式会社LIVE BOARD
クライアントサービス部
広告代理店の電通で屋外広告と交通広告を中心とした業務に8年間携わりつつ、2021年4月までイギリスのOOHグローバルエージェンシーPosterscopeに出向し、OOHの仕事を学ぶ。その後、NTTドコモと電通の共同出資で新設された株式会社 LIVE BOARDに入社し、OOHを起点としたマーケティングを実践している。
株式会社 LIVE BOARD サービスサイト
https://service.liveboard.co.jp/
株式会社LIVE BOARD コーポレートサイト
https://liveboard.co.jp/
現王園章太さんツイッター
https://twitter.com/gennozono
現王園章太さん関連記事
https://space-media.jp/news/detail/2707/
https://space-media.jp/news/detail/2681/
取材・文/寺田剛治
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