OOHニュース
街をエンタメ化するモビリティメディア 株式会社ニューステクノロジー 三浦純揮
タクシーに乗り込んだとき、助手席の背面に設置されたモニターを目にしたことはあるだろうか。もしくは、信号待ちをしているときにタクシーの車窓に広告が映し出されているのを見た人もいるだろう。
他にも、ヘアサロンやオフィスの喫煙ルームなど、都心のパブリックスペースに新しい形のメディアが次々と誕生している。仕掛け人であるニューステクノロジーの三浦社長に聞くと、媒体開発の背景には独自の視点があった。
メディアに最適化したコンテンツを自社で制作
大塚:改めて御社の事業内容を教えてください。
三浦:動画マーケティングを主なビジネスとしています。TVCMやWEBCMなど幅広く映像を制作するクリエイティブチーム、WEB広告を運用するチーム、タクシーサイネージやヘアサロンサイネージなど、自社メディアの広告販売から配信コンテンツを企画・制作するチームの3軸で構成し、動画広告を軸に一気通貫したマーケティングソリューションを提供しています。
大塚:三浦さんのご経歴を伺えますでしょうか。
三浦:私自身は2010年にベクトルに新卒で入社し、翌年の2011年から3年間、ベクトル北京支社の立ち上げに参画しました。北京から帰国し、しばらくはベクトル傘下であるアンティル社でPR事業に従事していましたが、2018年頃にニューステクノロジーを任せたいというお話をいただき、代表として携わることになりました。
大塚:2年目で海外支社の立ち上げを任されるとはすごいですね。帰国後、ニューステクノロジーとしてはどのように事業展開していったのでしょうか。
三浦:当初からベースは動画だと考えていて、クリエイティブの体制をまず整えました。そしてコンテンツを運用できるメンバーがいたので、メディアに最適化したクリエイティブの開発と運用を軸に据えることにしました。
メディアに合わせたコンテンツというのは非常に重要です。例えば、テレビCMの素材をYouTubeにそのまま流しても、十分な効果を得られないんです。当社の場合、自社で開発したメディアに最適なコンテンツを自社で制作できるという点が強みとなっています。
タクシーの特性を最大限に活かした「走るエンターテインメント」
大塚:タクシー広告「GROWTH」開発のきっかけを教えてください。
三浦:2019年にGROWTHをローンチする前から、すでにタクシーの車内広告は存在していました。当時国内でも徐々にサイネージが付き始めたタイミングで、中国ではタクシー車内のサイネージが一般的だったことを思い出し、タクシー事業者に提案に行きました。
大塚:当初は何台くらいに搭載されたんですか?
三浦:元々ご提案させて頂いたタクシー事業者からのご紹介で、都内のタクシー会社5社が参画する合弁会社「みんなのタクシー株式会社」(現・S.RIDE株式会社)に設置する事となり、結果的に、11,000台規模からスタートすることができました。
「GROWTH」モニター
大塚:タイミング的にもマッチしたんですね。現在出稿されているクライアントはどのような企業が多いのでしょうか。
三浦:商材としてはBtoBが多いですね。都内のタクシー利用者は8割がビジネスパーソンです。実際に出稿効果を実感していただいているようで、70%近いお客様がリピートで出稿されています。
大塚:それは高い継続率ですね。強みはどこにあるとお考えですか?
三浦:コンテンツ力ですね。テレビでもWEBでも、基本的に広告というのは歓迎されない傾向にあります。
タクシーの車内ビジョンも「広告が流れるパネル」で終わってしまうと視認率が下がってしまうので、まずは「有益な情報との出会いがあるもの」として認知してもらい、視聴の習慣をつけてもらうことが大前提です。
そのため、乗客の属性に合わせたコンテンツを、雑誌のように週1度更新して配信しています。
大塚:コンテンツのテーマはどのように決めているのですか?
三浦:欲しい情報は何でもスマホで手に入る時代なので、あえて利用者の興味・関心の外側にあるもの、自ら検索はしないけれど知っておいて損はない情報を届けするようにしています。
また、移動手段であるタクシーは地域に関連した情報との相性がよいので、「都内のおすすめサウナ」「東京焼肉店ランキング」といった、エリアを意識した情報を提供しています。
大塚:単純にスペースを提供するのではなく、広告効果が最大化されるよう質の高いコンテンツを制作して情報発信しているんですね。
三浦:はい。究極的には「このコンテンツが見たいから、GROWTHが設置されているタクシーに乗る」という人をどれだけ増やせるかだと思っています。
多彩かつ、ターゲット属性を意識した質の高いコンテンツを配信
GROWTH WEEKLY MAGAZINE:https://magazine.growth-tokyo.jp/
大塚:国内初のタクシー車窓サイネージサービス「Canvas」についても伺います。まず、開発のきっかけからお聞かせください。
三浦:もともとは2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けたアイデアでした。ネオ東京、サイバーシティのような世界観が好きで、海外からアスリートや観客が来日したときに、タクシーの車窓が光って「Welcome to TOKYO」と書いていたり、キャラクターが映っていたりしたらかっこいいなと。
「Canvas」走行イメージ(L’Arc〜en〜Cielコラボタクシー「L’AXI」)
Netflix韓国ドラマ「ヴィンチェンツォタクシー」
大塚:広告媒体というよりは空間演出に近いんですね。
三浦:そうですね。GROWTHとCanvasは対の関係にあり、GROWTHはタクシーメーターが「実車」、Canvasは「空車」のときに投影されます。ですので当社としては1台のタクシーで2つの在庫を持っていることになります。
モビリティをメディア化することで、街を彩るエンターテインメントを目指しているんです。
大塚:どのような仕組みで投影されているんですか?
三浦:特殊なスクリーンフィルムが封入された窓ガラスに、車内からプロジェクターで静止画を投影しています。自動車用の窓ガラスに厳しい安全基準が設けられており、JPN TAXI用に安全性が高く基準をクリアするものをガラスメーカーのAGCさんに開発していただきました。
大塚:媒体としての特徴は?
三浦:まず、JPN TAXIの車窓は人の目線の高さにあるので視認されやすいという点がひとつあります。都心部だと信号待ちも多いので、停車している時間に通行人の目に留まります。
次に、リーチの数があります。空車のタクシーは人通りの多い繁華街を走るので、接触人数が必然的に多くなります。そして、タクシーには乗客を運ぶという本業があるので、車両やドライバー、ガソリンを新たに用意する必要がありません。その分、掲出料金を抑えることができます。
大塚:確かに合理的ですね。どのようなクライアントが出稿されているんですか?
三浦:こちらはBtoCがメインで、コンテンツ系が多いですね。マンガ「ONE PIECE」コミックス99巻発売のプロモーションでは、都内100台のタクシーに、1巻〜99巻までの名シーンを映しました。そのほかにも動画配信サービス、テレビ局、映画などの業界から出稿いただいています。
最新99巻発売&100巻年内到達記念ONE PIECEタクシー
大塚:GROWTH、Canvasを搭載した車両を、配車アプリで呼ぶこともできるんですね。
三浦:はい。移動時間であり空間であるタクシーを体験場所に変えていくという試みです。
例えば、タクシーアプリ「S.RIDE」で「ディズニープラスタクシー」を呼べば、車内でディズニープラスのコンテンツを視聴することができます。
アーティストの新曲プロモーションでは、車窓に静止画のコンテンツ、車内ではプロモーションビデオを放映しました。この企画はSNSと連動し、「見つけた」「乗った」という体験をファンが共有することで話題となりました。
今後はタクシーの配車サービスを使うとき、車種やタクシー会社だけでなく「車内で体験できること」で選ぶ時代が来るのではないかと思っています。
配車アプリで指定の場所に呼び、乗車中にコンテンツを楽しめる「ディズニープラスタクシー」
大塚:確かに、SNSとの相性は良さそうですね。そのほか、タクシーを使った取組みとしてはどのようなものが考えられますか?
三浦:現在、まだ大規模なイベントは開催しづらいのが現状です。その点、タクシーは多くても2~3人です。さらに乗車中に何かしらを体験させるということが可能なので、イベントの代案として使っていただきたいと思います。
大塚:いいですね。都内100カ所のモビリティイベントスペースといえますね。
注目すべきはユーザーの「可処分時間」
大塚:美容室に設置されている「COVER」、喫煙所の「BREAK」についても聞かせてください。いずれも非常に効果が期待できるメディアですが、開発の際はどういった点に着目しているのですか?
三浦:一定数のネットワークを構築できる業界、ターゲットが一定時間滞在する場所、その場所に行くフリークエンシーを重視しています。
美容室であれば一回あたり約2時間滞在しますし、オフィスの喫煙所は1回あたり5.8分、1日4.8回利用すると言われています。
この「可処分時間」に注目し、メディア開発をしています。場所の良し悪しというよりは、いかにターゲットが情報に接触する時間が存在しているかという考え方ですね。
ハイクラスなヘアサロンに設置されている「COVER」
オフィスの喫煙所に設置されている「BREAK」
大塚:そう考えると、オンライン以外の場所にもまだまだ可能性がありそうですね。三浦様が考える、オフライン広告の魅力とは?
三浦:公共の場に置いてある、街の景色の一部になれるということの強みがあると思います。SNSやWEB広告はパーソナライズされているので話題になりづらいですが、渋谷109にユニークな広告が出ていたら話題になりますよね。
どちらが良い悪いということではありませんが、情報を受け取る側の姿勢は明らかに違うと思います。
大塚:コロナ禍の影響はいかがでしたか?
三浦:Canvasのローンチは延期になりましたし、人出が極端に減ったのでもちろん影響がありました。ただ、同時にロケーション側が変化したことも感じています。ロケーションオーナーであるタクシーにしても美容室にしても、収益ポイントをいくつ作れるかという考え方にシフトしているのではないでしょうか。
そういった意味では、今後新しいロケーションにメディアを増やしていく上で、ロケーションオーナーとコミュニケーションを積極的に図っていきます。
大塚:今後の展望をお聞かせください。
三浦:街中に巨大な人物をホログラムで映すとか、プロジェクターを1000個くらい使ってビルの壁面に映像を映すとか、ダイナミックなプロジェクトができればと考えています。
「ハチ公前」のように街のランドマークになるようなものをつくってみたいですね。街のエンターテインメント化を進めていきたいと考えています。
プロフィール
株式会社ニューステクノロジー
代表取締役 三浦純揮
大学卒業後、国内No1のPR会社であるベクトルに入社。入社僅1年後にベクトルチャイナ(北京支社)の立ち上げ、ベクトルアジア展開に大きく貢献。2018年3月よりニューステクノロジー社の代表に就任。
動画マーケティングを軸に映像制作から広告運用、デジタルサイネージ事業を展開。
現在は、都内最大級のモビリティメディア「THE TOKYO TAXI VISION GROWTH」や国内初の車窓サイネージサービス「THE TOKYO MOBILITY GALLERY Canvas」を起点に、属性の高いロケーションのメディア開発を進め、顧客へ新たな価値/体験の提供を目指す。
https://recruit.newstech.co.jp/
取材・文/大貫翔子
他にも、ヘアサロンやオフィスの喫煙ルームなど、都心のパブリックスペースに新しい形のメディアが次々と誕生している。仕掛け人であるニューステクノロジーの三浦社長に聞くと、媒体開発の背景には独自の視点があった。
メディアに最適化したコンテンツを自社で制作
大塚:改めて御社の事業内容を教えてください。
三浦:動画マーケティングを主なビジネスとしています。TVCMやWEBCMなど幅広く映像を制作するクリエイティブチーム、WEB広告を運用するチーム、タクシーサイネージやヘアサロンサイネージなど、自社メディアの広告販売から配信コンテンツを企画・制作するチームの3軸で構成し、動画広告を軸に一気通貫したマーケティングソリューションを提供しています。
大塚:三浦さんのご経歴を伺えますでしょうか。
三浦:私自身は2010年にベクトルに新卒で入社し、翌年の2011年から3年間、ベクトル北京支社の立ち上げに参画しました。北京から帰国し、しばらくはベクトル傘下であるアンティル社でPR事業に従事していましたが、2018年頃にニューステクノロジーを任せたいというお話をいただき、代表として携わることになりました。
大塚:2年目で海外支社の立ち上げを任されるとはすごいですね。帰国後、ニューステクノロジーとしてはどのように事業展開していったのでしょうか。
三浦:当初からベースは動画だと考えていて、クリエイティブの体制をまず整えました。そしてコンテンツを運用できるメンバーがいたので、メディアに最適化したクリエイティブの開発と運用を軸に据えることにしました。
メディアに合わせたコンテンツというのは非常に重要です。例えば、テレビCMの素材をYouTubeにそのまま流しても、十分な効果を得られないんです。当社の場合、自社で開発したメディアに最適なコンテンツを自社で制作できるという点が強みとなっています。
タクシーの特性を最大限に活かした「走るエンターテインメント」
大塚:タクシー広告「GROWTH」開発のきっかけを教えてください。
三浦:2019年にGROWTHをローンチする前から、すでにタクシーの車内広告は存在していました。当時国内でも徐々にサイネージが付き始めたタイミングで、中国ではタクシー車内のサイネージが一般的だったことを思い出し、タクシー事業者に提案に行きました。
大塚:当初は何台くらいに搭載されたんですか?
三浦:元々ご提案させて頂いたタクシー事業者からのご紹介で、都内のタクシー会社5社が参画する合弁会社「みんなのタクシー株式会社」(現・S.RIDE株式会社)に設置する事となり、結果的に、11,000台規模からスタートすることができました。
「GROWTH」モニター
大塚:タイミング的にもマッチしたんですね。現在出稿されているクライアントはどのような企業が多いのでしょうか。
三浦:商材としてはBtoBが多いですね。都内のタクシー利用者は8割がビジネスパーソンです。実際に出稿効果を実感していただいているようで、70%近いお客様がリピートで出稿されています。
大塚:それは高い継続率ですね。強みはどこにあるとお考えですか?
三浦:コンテンツ力ですね。テレビでもWEBでも、基本的に広告というのは歓迎されない傾向にあります。
タクシーの車内ビジョンも「広告が流れるパネル」で終わってしまうと視認率が下がってしまうので、まずは「有益な情報との出会いがあるもの」として認知してもらい、視聴の習慣をつけてもらうことが大前提です。
そのため、乗客の属性に合わせたコンテンツを、雑誌のように週1度更新して配信しています。
大塚:コンテンツのテーマはどのように決めているのですか?
三浦:欲しい情報は何でもスマホで手に入る時代なので、あえて利用者の興味・関心の外側にあるもの、自ら検索はしないけれど知っておいて損はない情報を届けするようにしています。
また、移動手段であるタクシーは地域に関連した情報との相性がよいので、「都内のおすすめサウナ」「東京焼肉店ランキング」といった、エリアを意識した情報を提供しています。
大塚:単純にスペースを提供するのではなく、広告効果が最大化されるよう質の高いコンテンツを制作して情報発信しているんですね。
三浦:はい。究極的には「このコンテンツが見たいから、GROWTHが設置されているタクシーに乗る」という人をどれだけ増やせるかだと思っています。
多彩かつ、ターゲット属性を意識した質の高いコンテンツを配信
GROWTH WEEKLY MAGAZINE:https://magazine.growth-tokyo.jp/
大塚:国内初のタクシー車窓サイネージサービス「Canvas」についても伺います。まず、開発のきっかけからお聞かせください。
三浦:もともとは2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けたアイデアでした。ネオ東京、サイバーシティのような世界観が好きで、海外からアスリートや観客が来日したときに、タクシーの車窓が光って「Welcome to TOKYO」と書いていたり、キャラクターが映っていたりしたらかっこいいなと。
「Canvas」走行イメージ(L’Arc〜en〜Cielコラボタクシー「L’AXI」)
Netflix韓国ドラマ「ヴィンチェンツォタクシー」
大塚:広告媒体というよりは空間演出に近いんですね。
三浦:そうですね。GROWTHとCanvasは対の関係にあり、GROWTHはタクシーメーターが「実車」、Canvasは「空車」のときに投影されます。ですので当社としては1台のタクシーで2つの在庫を持っていることになります。
モビリティをメディア化することで、街を彩るエンターテインメントを目指しているんです。
大塚:どのような仕組みで投影されているんですか?
三浦:特殊なスクリーンフィルムが封入された窓ガラスに、車内からプロジェクターで静止画を投影しています。自動車用の窓ガラスに厳しい安全基準が設けられており、JPN TAXI用に安全性が高く基準をクリアするものをガラスメーカーのAGCさんに開発していただきました。
大塚:媒体としての特徴は?
三浦:まず、JPN TAXIの車窓は人の目線の高さにあるので視認されやすいという点がひとつあります。都心部だと信号待ちも多いので、停車している時間に通行人の目に留まります。
次に、リーチの数があります。空車のタクシーは人通りの多い繁華街を走るので、接触人数が必然的に多くなります。そして、タクシーには乗客を運ぶという本業があるので、車両やドライバー、ガソリンを新たに用意する必要がありません。その分、掲出料金を抑えることができます。
大塚:確かに合理的ですね。どのようなクライアントが出稿されているんですか?
三浦:こちらはBtoCがメインで、コンテンツ系が多いですね。マンガ「ONE PIECE」コミックス99巻発売のプロモーションでは、都内100台のタクシーに、1巻〜99巻までの名シーンを映しました。そのほかにも動画配信サービス、テレビ局、映画などの業界から出稿いただいています。
最新99巻発売&100巻年内到達記念ONE PIECEタクシー
大塚:GROWTH、Canvasを搭載した車両を、配車アプリで呼ぶこともできるんですね。
三浦:はい。移動時間であり空間であるタクシーを体験場所に変えていくという試みです。
例えば、タクシーアプリ「S.RIDE」で「ディズニープラスタクシー」を呼べば、車内でディズニープラスのコンテンツを視聴することができます。
アーティストの新曲プロモーションでは、車窓に静止画のコンテンツ、車内ではプロモーションビデオを放映しました。この企画はSNSと連動し、「見つけた」「乗った」という体験をファンが共有することで話題となりました。
今後はタクシーの配車サービスを使うとき、車種やタクシー会社だけでなく「車内で体験できること」で選ぶ時代が来るのではないかと思っています。
配車アプリで指定の場所に呼び、乗車中にコンテンツを楽しめる「ディズニープラスタクシー」
大塚:確かに、SNSとの相性は良さそうですね。そのほか、タクシーを使った取組みとしてはどのようなものが考えられますか?
三浦:現在、まだ大規模なイベントは開催しづらいのが現状です。その点、タクシーは多くても2~3人です。さらに乗車中に何かしらを体験させるということが可能なので、イベントの代案として使っていただきたいと思います。
大塚:いいですね。都内100カ所のモビリティイベントスペースといえますね。
注目すべきはユーザーの「可処分時間」
大塚:美容室に設置されている「COVER」、喫煙所の「BREAK」についても聞かせてください。いずれも非常に効果が期待できるメディアですが、開発の際はどういった点に着目しているのですか?
三浦:一定数のネットワークを構築できる業界、ターゲットが一定時間滞在する場所、その場所に行くフリークエンシーを重視しています。
美容室であれば一回あたり約2時間滞在しますし、オフィスの喫煙所は1回あたり5.8分、1日4.8回利用すると言われています。
この「可処分時間」に注目し、メディア開発をしています。場所の良し悪しというよりは、いかにターゲットが情報に接触する時間が存在しているかという考え方ですね。
ハイクラスなヘアサロンに設置されている「COVER」
オフィスの喫煙所に設置されている「BREAK」
大塚:そう考えると、オンライン以外の場所にもまだまだ可能性がありそうですね。三浦様が考える、オフライン広告の魅力とは?
三浦:公共の場に置いてある、街の景色の一部になれるということの強みがあると思います。SNSやWEB広告はパーソナライズされているので話題になりづらいですが、渋谷109にユニークな広告が出ていたら話題になりますよね。
どちらが良い悪いということではありませんが、情報を受け取る側の姿勢は明らかに違うと思います。
大塚:コロナ禍の影響はいかがでしたか?
三浦:Canvasのローンチは延期になりましたし、人出が極端に減ったのでもちろん影響がありました。ただ、同時にロケーション側が変化したことも感じています。ロケーションオーナーであるタクシーにしても美容室にしても、収益ポイントをいくつ作れるかという考え方にシフトしているのではないでしょうか。
そういった意味では、今後新しいロケーションにメディアを増やしていく上で、ロケーションオーナーとコミュニケーションを積極的に図っていきます。
大塚:今後の展望をお聞かせください。
三浦:街中に巨大な人物をホログラムで映すとか、プロジェクターを1000個くらい使ってビルの壁面に映像を映すとか、ダイナミックなプロジェクトができればと考えています。
「ハチ公前」のように街のランドマークになるようなものをつくってみたいですね。街のエンターテインメント化を進めていきたいと考えています。
プロフィール
株式会社ニューステクノロジー
代表取締役 三浦純揮
大学卒業後、国内No1のPR会社であるベクトルに入社。入社僅1年後にベクトルチャイナ(北京支社)の立ち上げ、ベクトルアジア展開に大きく貢献。2018年3月よりニューステクノロジー社の代表に就任。
動画マーケティングを軸に映像制作から広告運用、デジタルサイネージ事業を展開。
現在は、都内最大級のモビリティメディア「THE TOKYO TAXI VISION GROWTH」や国内初の車窓サイネージサービス「THE TOKYO MOBILITY GALLERY Canvas」を起点に、属性の高いロケーションのメディア開発を進め、顧客へ新たな価値/体験の提供を目指す。
https://recruit.newstech.co.jp/
取材・文/大貫翔子