OOHニュース
賑わいの仕掛けは街とともに。100年の歴史を継承する現代の「箱舟」表参道ヒルズ
明治神宮の参道として整備され、美しいケヤキ並木で知られる表参道。現在は日本を代表するファッションの中心地として知られ、通りには世界的なハイブランドをはじめとするアパレルショップや雑貨店、カフェなどが立ち並ぶ。
通りに面して250mものファサードを構える表参道ヒルズは、地域の中核をなす複合商業施設だ。運営は、都内でいくつもの開発を手がける森ビル。他の施設とは一線を画す媒体運用や、地域全体を活性化させるための取り組みについて聞いた。
景観との調和を重んじた設計と媒体計画
大塚:表参道ヒルズの歴史を改めてお聞かせいただけますか?
西村:表参道ヒルズは「同潤会青山アパート」の建て替え事業として2006年2月11日にオープンし、今年の2月に16周年を迎えました。
東京メトロ表参道駅から明治神宮へ至る世界的なストリートに面し、表参道全体の4/1の長さを占めています。
大塚:どのようなテナントが入居されているのですか?
西村:ファッション、ビューティー、ライフスタイル、飲食など約100店舗に出店いただいています。この春には日本初上陸となるヴァレンティノ ビューティーを含む16店舗がオープンしました。ご出店ブランドには表参道ヒルズのビジョンをよくご理解いただき店舗作りをしていただいております。
大塚:建物のデザインも個性的ですよね。
西村:設計は建築家の安藤忠雄氏によるもので、景観・環境との調和がテーマとなっています。3つの建物で構成されていまして、6層を貫く吹き抜けと、表参道の坂とほぼ同じ勾配になっているらせん状のスロープが特徴です。
大塚:来館者の年齢層は?
西村:もともとの顧客ボリュームとしては30代、次いで40代でしたが、最近はファッションに感度の高い20代の方も増えています。現在は20~40代がほぼ変わらず、バランスよく年齢軸が保たれています。
大塚:渋谷、青山とも近い表参道ならではかもしれませんね。OOHとしてはどのような特徴があるのでしょうか。
秋葉:表参道ヒルズのメディアは六本木ヒルズと同様、「街をメディア化する」=「タウンマネジメント」というコンセプトに基づいています。
単純にスペースをお貸出しするのではなく、館全体をカスタマイズして、他の施設にはない新しいメディアになりうる使い方を目指しています。
そのため、館全体をメディアとして位置付け、新しい表現力をもつ情報発信メディアの場「箱舟」という意味で、館内のメディアを総称して「MEDIA SHIP.」と名付けています。
大塚:箱舟とは、面白い考え方ですね。具体的にはどのような媒体があるのですか?
秋葉:人気があるのは、外壁のバナーですね。表参道ヒルズの250mのファサードに60本×両面=120面の設置が可能ですが、他では見る事の出来ない圧倒的な規模感、連続感が特徴です。
また、来街者の目線に近い位置に掲出されることから視認性も高く、テナント様はもちろん、外部のクライアントにも頻繁にご利用いただいています。
大塚:入居していないブランドも掲出できるんですね。よく見ると、競合するブランドの店舗上にもかかっているように見えます。
秋葉:はい。表参道ヒルズでは館全体でボリューム感を持って掲出することでにぎわいが生まれるという考えから、フレキシブルに対応しています。
大塚:それは珍しいですね。テナント様とはどのように調整を?
秋葉:日常的にしっかりとリレーションを構築しているのでクリアになっています。施設サイズがコンパクトであるがゆえに、館内のコミュニケーションがとりやすいんです。
大塚:なるほど。街全体の活性化にもつながりますね。
「三方よし」を実現する独自のイベントモデル
秋葉:来館者向けでいうと、メインエントランス前の「エントランスメディア」は、表参道沿いにある唯一のイベントスペースで、展示やディスプレイ等が実施できます。一番多いのは乗用車の展示ですね。
車両展示と併せて、地下の駐車場に実車を用意して外苑に繰り出す試乗イベントを行うこともできます。これに合わせて今年から駐車場のスロープや待合スペースにも媒体を新設し、パッケージでご利用いただけるようにしたことで問い合わせも急増しました。
大塚:訴求力の高そうなプランです。表参道ヒルズのシンボルである、吹き抜けの大階段はいかがですか?
秋葉:おっしゃる通り、入館すると誰もが目にするスペースで、館内で最もシンボリックなメディアです。全フロアを貫く吹き抜け空間を活かして、天井から懸垂幕を吊り下げたり、クリスマスツリーのような高さのある施工物を展示したりすることもできます。
階段部分は踊り場も含めて約200㎡あり、上層階のスロープから見下ろしたときの見え方や、最下層から見上げたときの見え方などを考慮し、クライアント様によって多彩な使い方をされています。平面ではなく空間としての打ち出しができ、表現の幅が広いのが特徴です。
大塚:吹き抜けの先にもイベントスペースがありますよね。
秋葉:情報発信スペース「スペース オー」は、548㎡のホール仕様のイベントスペースです。コスメ、アパレル、食品、アルコール、IT系をはじめ様々な業種のプレス、一般向けイベントとしてご利用いただいています。
一般向けのイベント開催時には、バナーや大階段などと告知連動させた掲出をご提案していまして、メディアとスペースを組み合わせたジャック感のある使い方が人気です。
大塚:媒体価値を高めるためのブランディングはどのようにされているのですか?
西村:館側からクライアントに企画を提案したプロモーションイベントなどがあります。役割として私が施設としてのプロモーション、秋葉がメディアの提案営業をそれぞれ行っていますが、施設を活性化する目的は同じですので、チームの垣根を越えて共にイベントを企画し、クライアントにご協賛いただいて実施しています。
大塚:御社側から提案するんですか? 珍しい手法ですね。具体的にはどのような企画があったのですか?
西村:代表的なものでは、森ビルグループ共通のハウスカードの会員様を中心とした顧客限定の、館の貸し切りパーティーがあります。
ライブパフォーマンスやケータリングやイベント、制作物などのコンテンツはすべて我々で作り上げます。クライアントには商品の体験型のタッチ&トライコーナーを設けていただくなどして、顧客との接点や販売機会を創出しています。
大塚:それは、かなり盛り上がりそうですね。クライアントの反応はいかがでしたか?
秋葉:非常に好評です。招待客のみのクローズイベントなので、当社にとっては顧客とのリレーション強化、クライアントにとっては消費意欲の高いお客様と接触できる、さらに来場される方は限定感のあるイベントで質の高い商品に触れられる、とWin-Win-Winになります。
クライアントの満足度を高めるために、受注後はセールスチームがクライアントの立場に立ち、プロモーションチームからの提案をよりクライアントニーズに繋げるパイプ役に徹したりもしてもいるんです。
100年の歴史の重みを感じて
大塚:コロナの影響はいかがですか?
西村:休業や営業時間制限、海外からのお客様がいらっしゃらないこともあり、一時的に影響を受けましたが、2021年度のハウスカードの会員売上はコロナ前の2018年度を上回っています。顧客とのリレーションの強化策により、安定的にご来館とお買上げをいただけております。
秋葉:最近は少しずつ日常が戻ってきていますし、今後に関してはまたコロナと共存しながらでも楽しめるような表参道ヒルズオリジナルのイベントを企画できるのではないかと、期待感を持っています。
大塚:そうですね。では最後に、表参道の街全体を見据えて、今後の事業戦略や展望をお聞かせください。
西村:表参道の由緒である明治神宮は、2020年に創建100年を迎えられました。鎮守の杜は100年後の景色を見据えて作られたといいますから、我々は先人たちが描いた未来の瞬間に立ち会っていると言えます。
そのようなご縁から、表参道の街全体を守り、盛り上げていくことも使命だと感じ、地元商店会の皆様とも密に連携しています。
施設としての発展はもちろんですが、今後も地域とともに歩みを進め、表参道がさらに魅力的な街になるよう、創意工夫していきたいと思います。
プロフィール
森ビル株式会社
営業本部 商業施設事業部
表参道ヒルズ運営室
https://www.omotesandohills.com/
副館長/プロモーションチーム リーダー
西村 雄介(右)
メディア&スペース企画運営担当 リーダー
秋葉 憲幸(左)
取材・文/大貫翔子
通りに面して250mものファサードを構える表参道ヒルズは、地域の中核をなす複合商業施設だ。運営は、都内でいくつもの開発を手がける森ビル。他の施設とは一線を画す媒体運用や、地域全体を活性化させるための取り組みについて聞いた。
景観との調和を重んじた設計と媒体計画
大塚:表参道ヒルズの歴史を改めてお聞かせいただけますか?
西村:表参道ヒルズは「同潤会青山アパート」の建て替え事業として2006年2月11日にオープンし、今年の2月に16周年を迎えました。
東京メトロ表参道駅から明治神宮へ至る世界的なストリートに面し、表参道全体の4/1の長さを占めています。
大塚:どのようなテナントが入居されているのですか?
西村:ファッション、ビューティー、ライフスタイル、飲食など約100店舗に出店いただいています。この春には日本初上陸となるヴァレンティノ ビューティーを含む16店舗がオープンしました。ご出店ブランドには表参道ヒルズのビジョンをよくご理解いただき店舗作りをしていただいております。
大塚:建物のデザインも個性的ですよね。
西村:設計は建築家の安藤忠雄氏によるもので、景観・環境との調和がテーマとなっています。3つの建物で構成されていまして、6層を貫く吹き抜けと、表参道の坂とほぼ同じ勾配になっているらせん状のスロープが特徴です。
大塚:来館者の年齢層は?
西村:もともとの顧客ボリュームとしては30代、次いで40代でしたが、最近はファッションに感度の高い20代の方も増えています。現在は20~40代がほぼ変わらず、バランスよく年齢軸が保たれています。
大塚:渋谷、青山とも近い表参道ならではかもしれませんね。OOHとしてはどのような特徴があるのでしょうか。
秋葉:表参道ヒルズのメディアは六本木ヒルズと同様、「街をメディア化する」=「タウンマネジメント」というコンセプトに基づいています。
単純にスペースをお貸出しするのではなく、館全体をカスタマイズして、他の施設にはない新しいメディアになりうる使い方を目指しています。
そのため、館全体をメディアとして位置付け、新しい表現力をもつ情報発信メディアの場「箱舟」という意味で、館内のメディアを総称して「MEDIA SHIP.」と名付けています。
大塚:箱舟とは、面白い考え方ですね。具体的にはどのような媒体があるのですか?
秋葉:人気があるのは、外壁のバナーですね。表参道ヒルズの250mのファサードに60本×両面=120面の設置が可能ですが、他では見る事の出来ない圧倒的な規模感、連続感が特徴です。
また、来街者の目線に近い位置に掲出されることから視認性も高く、テナント様はもちろん、外部のクライアントにも頻繁にご利用いただいています。
大塚:入居していないブランドも掲出できるんですね。よく見ると、競合するブランドの店舗上にもかかっているように見えます。
秋葉:はい。表参道ヒルズでは館全体でボリューム感を持って掲出することでにぎわいが生まれるという考えから、フレキシブルに対応しています。
大塚:それは珍しいですね。テナント様とはどのように調整を?
秋葉:日常的にしっかりとリレーションを構築しているのでクリアになっています。施設サイズがコンパクトであるがゆえに、館内のコミュニケーションがとりやすいんです。
大塚:なるほど。街全体の活性化にもつながりますね。
「三方よし」を実現する独自のイベントモデル
秋葉:来館者向けでいうと、メインエントランス前の「エントランスメディア」は、表参道沿いにある唯一のイベントスペースで、展示やディスプレイ等が実施できます。一番多いのは乗用車の展示ですね。
車両展示と併せて、地下の駐車場に実車を用意して外苑に繰り出す試乗イベントを行うこともできます。これに合わせて今年から駐車場のスロープや待合スペースにも媒体を新設し、パッケージでご利用いただけるようにしたことで問い合わせも急増しました。
大塚:訴求力の高そうなプランです。表参道ヒルズのシンボルである、吹き抜けの大階段はいかがですか?
秋葉:おっしゃる通り、入館すると誰もが目にするスペースで、館内で最もシンボリックなメディアです。全フロアを貫く吹き抜け空間を活かして、天井から懸垂幕を吊り下げたり、クリスマスツリーのような高さのある施工物を展示したりすることもできます。
階段部分は踊り場も含めて約200㎡あり、上層階のスロープから見下ろしたときの見え方や、最下層から見上げたときの見え方などを考慮し、クライアント様によって多彩な使い方をされています。平面ではなく空間としての打ち出しができ、表現の幅が広いのが特徴です。
大塚:吹き抜けの先にもイベントスペースがありますよね。
秋葉:情報発信スペース「スペース オー」は、548㎡のホール仕様のイベントスペースです。コスメ、アパレル、食品、アルコール、IT系をはじめ様々な業種のプレス、一般向けイベントとしてご利用いただいています。
一般向けのイベント開催時には、バナーや大階段などと告知連動させた掲出をご提案していまして、メディアとスペースを組み合わせたジャック感のある使い方が人気です。
大塚:媒体価値を高めるためのブランディングはどのようにされているのですか?
西村:館側からクライアントに企画を提案したプロモーションイベントなどがあります。役割として私が施設としてのプロモーション、秋葉がメディアの提案営業をそれぞれ行っていますが、施設を活性化する目的は同じですので、チームの垣根を越えて共にイベントを企画し、クライアントにご協賛いただいて実施しています。
大塚:御社側から提案するんですか? 珍しい手法ですね。具体的にはどのような企画があったのですか?
西村:代表的なものでは、森ビルグループ共通のハウスカードの会員様を中心とした顧客限定の、館の貸し切りパーティーがあります。
ライブパフォーマンスやケータリングやイベント、制作物などのコンテンツはすべて我々で作り上げます。クライアントには商品の体験型のタッチ&トライコーナーを設けていただくなどして、顧客との接点や販売機会を創出しています。
大塚:それは、かなり盛り上がりそうですね。クライアントの反応はいかがでしたか?
秋葉:非常に好評です。招待客のみのクローズイベントなので、当社にとっては顧客とのリレーション強化、クライアントにとっては消費意欲の高いお客様と接触できる、さらに来場される方は限定感のあるイベントで質の高い商品に触れられる、とWin-Win-Winになります。
クライアントの満足度を高めるために、受注後はセールスチームがクライアントの立場に立ち、プロモーションチームからの提案をよりクライアントニーズに繋げるパイプ役に徹したりもしてもいるんです。
100年の歴史の重みを感じて
大塚:コロナの影響はいかがですか?
西村:休業や営業時間制限、海外からのお客様がいらっしゃらないこともあり、一時的に影響を受けましたが、2021年度のハウスカードの会員売上はコロナ前の2018年度を上回っています。顧客とのリレーションの強化策により、安定的にご来館とお買上げをいただけております。
秋葉:最近は少しずつ日常が戻ってきていますし、今後に関してはまたコロナと共存しながらでも楽しめるような表参道ヒルズオリジナルのイベントを企画できるのではないかと、期待感を持っています。
大塚:そうですね。では最後に、表参道の街全体を見据えて、今後の事業戦略や展望をお聞かせください。
西村:表参道の由緒である明治神宮は、2020年に創建100年を迎えられました。鎮守の杜は100年後の景色を見据えて作られたといいますから、我々は先人たちが描いた未来の瞬間に立ち会っていると言えます。
そのようなご縁から、表参道の街全体を守り、盛り上げていくことも使命だと感じ、地元商店会の皆様とも密に連携しています。
施設としての発展はもちろんですが、今後も地域とともに歩みを進め、表参道がさらに魅力的な街になるよう、創意工夫していきたいと思います。
プロフィール
森ビル株式会社
営業本部 商業施設事業部
表参道ヒルズ運営室
https://www.omotesandohills.com/
副館長/プロモーションチーム リーダー
西村 雄介(右)
メディア&スペース企画運営担当 リーダー
秋葉 憲幸(左)
取材・文/大貫翔子
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