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逆手にとる広告 | 青木慎二
今回の記事は、アンビエント広告を中心に、街なかに良質な違和感を演出する青木さんに寄稿していただき掲載しております。
青木さんは現在、株式会社メディアコンシェルジュでお仕事をされており、面白いOOHのアウトプットを数多く手がけられております。
noteで発信をされているのでチェックしてみてください。
文/青木慎二
青木さんは現在、株式会社メディアコンシェルジュでお仕事をされており、面白いOOHのアウトプットを数多く手がけられております。
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文/青木慎二
目次
・強豪ひしめき合う中で目立つ
・あえて隠れるオトナの遊び①
・あえて隠れるオトナの遊び ②
・あえて隠れるオトナの遊び③
・あえて隠れることの効能
強豪ひしめき合う中で目立つ
2021年のスーパーボウルで放映されたRedditのCM。
What just happened? pic.twitter.com/DypRp6DeQt
— Reddit (@reddit) February 8, 2021
気合の入った30秒以上のCMが多いなか、Redditは5秒間の短いCMを放映しました。しかも5秒間では全て読めない文章を表示。
ちょうど注目されているGameStop騒動に関連する内容だったこともあり、後から一時停止して読み込みたいと思わせる構成でした。
本来はできるだけ沢山の人に訴求することが目的の広告なのに、あえて訴求範囲を狭くしたりシークレット感を演出する事例があります。
正攻法では太刀打ちできない時、仕掛け人にとっては腕の見せどころです。
そんな「逆手にとる広告」の類いで、先日、個人的に大好きな表現に触れたのでご紹介します。
あえて隠れるオトナの遊び①
緊急事態宣言発令により飲食店の営業時間短縮が求められるなか、街を歩いていても店舗の閉店による空きテナントが目立ってきています。
そんなご時世で、渋谷の BAR『THE SG CLUB』のこの展開↓
この張り紙をよく見ると、
そしてInstagramには以下のメッセージ
どの時代にもおかしな法律がある。酒が世の中を乱してるという理由で、1920年アメリカでアルコールの製造と販売が全面的に禁止された。それがあの有名な禁酒法時代。
禁酒法が施行された1920年から1933年の間、隠れて酒を提供する”speakeasy”というスタイルのもぐり酒場が流行して、バーとカクテルの文化はものすごい発展をした。
去年でちょうど100年、自由に飲みに行けない昨今、これはまさに当時と変わらない状況。
こんな時代はもうしばらく来ないんじゃないかと言うことで、The SG Club では“閉店した空き物件”に見せかけた、スピークイージー SG Real Estate (エスジー不動産) として、オープンします。
ちなみにこれは、閉めてるように見せてこっそりとやる闇営業ではなく、飲みに行っちゃいけないけど、バーに行くという背徳感を楽しむという大人の遊び。
2/7-3/7 営業時間
1F GUZZLE 17:00-1:00
地下 SIP 20:00-1:00
2F SAVOR 19:00-3:00
こっそりとお待ちしてます。
ギミックだけでなく、禁酒法時代の”speakeasy”というスタイルに言及するあたりも、文化的なメッセージが感じられてとても素敵です。
仕掛け人はオトナの遊び心で企ててるだけだと思いますが、アンビエント広告の事例としてとても大好きです。あっぱれ!
あえて隠れるオトナの遊び ②
メジャーなブランドでも過去にこのような仕掛けを実施しています。
こちらは2019年の事例です。
渋谷の工事現場仮囲いに置かれたコロナビールの自動販売機。
商品棚に廃棄された空きペットボトルが並ぶ中、購入できるのはコロナビールの缶のみ。
商品棚に廃棄された空きペットボトルが並ぶ中、購入できるのはコロナビールの缶のみ。
コロナビールを購入すると、それまで脇に立っていたガードマンが仮囲いの内側にアテンドしてくれる。
そして内側はコロナビールの世界観でブランディングされたポップアップバー。
Corona PARADISE BAR
あえて隠れるオトナの遊び③
さらに遡って2016年の事例。
ロンドンに設置されたCoca-Colaの自動販売機。その自販機が目の前の歩行者に「イビサでパーティしない?」と話しかけてきます。
パーティに行きそうな人を見つけると、自販機が横にスライドして会場への入り口が現れます。
中に入っていくろスペインのイビサ島のようなパーティが繰り広げられています。
単なる自販機を入り口にして、その先に情緒的でエモーショナルな体験を提供することで、Coca-Colaのブランドメッセージを訴求しています。
あえて隠れることの効能
シークレットパーティなどは多数開催されていますが、イベントだけでなく店頭プロモーションやアンビエント広告の領域においても、「知る人ぞ知る感」がメッセージとして刺さります。
もちろん、誰にも知られないままに終わってしまうという悲しい事態にならないように、SNSで届く導線まで用意しておく必要があります。
情報洪水のなかで埋もれてしまわないように、知恵を絞ってアクセスしてもらう手法として、このような「逆手にとる広告」はオトナの遊び心に溢れていて魅力的です。
コロナ渦で大々的な集客を謳いにくくなった昨今、対象を超限定した「あえて隠れるファン向け体験」をアンビエントの手法を絡ませながら実施してみてはいかがでしょうか。
今後も個人的に好きな事例をピックアップしていきます。なお、今回も僕自身が企画設計の当事者ではなく、あくまで生活者として接触した事例をあげています。好きな要因は分析していきますが、事例の是非はあまり論評せず、現象の記録に留めておこうと思います。
青木慎二
アンビエント広告を中心に、街なかに良質な違和感を演出する仕事をしています。 都市とローカルを行き来するなかでの気づきを大切にしていきたい。 出雲の工房で妻がつくる自家製酵母パンや発酵食についても発信していきます。
株式会社メディアコンシェルジュ所属/キノトマ代表
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青木慎二
アンビエント広告を中心に、街なかに良質な違和感を演出する仕事をしています。 都市とローカルを行き来するなかでの気づきを大切にしていきたい。 出雲の工房で妻がつくる自家製酵母パンや発酵食についても発信していきます。
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