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スマホ端末の位置情報等を活用し、OOHの効果を〝見える化〟 LIVE BOARD・現王園章太【前編】
これまでロケーションが売り文句だったOOH業界。そこに一石を投じたのが、2019年にNTTドコモと電通が共同出資して立ち上げた株式会社LIVE BOARD(以下、LIVE BOARD)。
スマホ端末の位置情報等※からスクリーンの広告視認者数(インプレッション)をクライアントに提示することで、OOHのPDCA(Plan→Do→Check→Action)サイクルを回すことに注力している同社の取り組みについて、クライアントサービス部の現王園章太氏に聞いた。
※利用者の個人情報が特定されない統計的な情報として配慮されています
日本のOOH業界が抱える3つの課題
大塚:既存のOOHにはどんな問題があるとお考えですか?
現王園:大きな課題が3つほどあると思っています。ひとつが、何人の人が広告を見ているのか、という視認者数の計測ができていないことです。コロナ禍において、「本日の渋谷スクランブル交差点の人流は、去年に比べて90%でした」などと報じられていますが、人流をメディアベースに落とし込んだとき、あの看板の前に何人いたのか? というクライアントにとって非常に重要な情報を計測できていない状態が当たり前になっています。
大塚:確かに、デジタル広告がデータで示せるのに対して、OOHの価値はかなり不安定な状態であるということとも言えますね。
現王園:ふたつ目は、フレキシビリティーにかける点。クライアントがすぐにOOH広告を出したいと思っても、掲出できるのが最短でも7日~10日後とかになる。もちろんOOHはそもそもアナログなものなので仕方がない部分があるのですが、DOOHでも改善されていない部分なのです。
大塚:それって仕掛けているOOH事業者側が、急な依頼には対応したくないという部分もありますよね。言葉を選ばずに言えば、ラクをしたいから。
現王園:そして3つ目は、〝出しっ放し〟で効果を測定できないこと。ラーメン屋さんを例にあげるとするなら、「確かに看板は見たけれど、俺の店に食べにきているお客さん、どれくらい増えているのかな? 知ってくれているのかな?」というように、非常にその効果がわかりづらいメディアなんです。
大塚:この3つの課題を解決するために設立されたのがLIVE BOARDなんですね。
スマホ端末の位置情報等をOOHの効果測定に活用
現王園:2019年2月、NTTドコモと電通が共同出資して誕生しました。それぞれがどのような役割をしているかというと、電通は商品開発や設計を手掛けて、〝売れるものを作る〟ことに注力。一方、NTTドコモは〝データ〟の活用です。日本のスマホキャリア市場で43.8%のシェアを持っています。ユーザの許諾を得た端末に紐づいている契約者情報と位置情報等のデータを取得でき、それらを匿名化加工した形でOOHの効果測定や検証に役立てています。
NTTドコモのキャリアデータを用いて、指定したターゲット含有率が高い場所/時間で配信できる。
大塚:つまり、例えば渋谷のOOHの前に、何時に何人くらいいるかがわかるようにしているということですね。それだけでなく、OOHを見て実際に店舗に行ったかどうかということもわかりますよね。
現王園:そうです。会社を立ち上げた時のコンセプトは、NTTドコモが持っている情報を最大限活用した商品を設計してOOH業界に新しいメディアを作っていくというもの。たとえば、OOHを見た人が、実際にスマホなどで検索をかけたか、サイトに来訪したか、実際に購入したかどうかなど、様々なアイデアを実現できる環境を持っていることがLIVE BOARDの強みになっています。
大塚:これまでオフラインだったOOHにNTTドコモのデータを活用することで、ある意味で〝オンライン化〟するということですね。
現王園:弊社は、自社で80面以上のスクリーンを持っているのですが、その広告配信システムには、デジタル広告に近い配信システムを使っています。既存のOOHでは、先に述べたように出稿までに7日~10日の期間が必要だったりしましたが、このシステムを導入したことで、広告の掲出までの期間を大幅に短縮できるようにしました。
大塚:インプレッションはどのように計測しているのでしょうか?
現王園:ドコモの位置情報などのデータを活用しています。
大塚:位置情報だけで、それは人数を推測できるものなのですか?
現王園:事前に各スクリーンを実際に確認し、「ここからだと見える」「ここにいるとビルが邪魔になって見えない」というように〝視認エリア〟を決めます。定義(画像①)した視認エリアに、NTTドコモの位置情報をリンクさせることで、広告が流れるタイミングで何人そこにいるのかわかります。また、単純に視認エリアにいるという情報だけだと、広告に対して逆方向に歩いているなど、視認していない人をインプレッションにカウントしてしまう場合があります。そこで各ロケーション別の特性を踏まえた〝視認率〟をインプレッションの推計に利用しています。例えば、広告が配信された時、100人が視認エリアにいたとしても、視認率が6割であれば60インプレッションとなるのです。(画像②)
画像①
画像②
大塚:Webメディアなどでは、広告とわかった瞬間に避ける人が多いですが、OOHだと自然と目に入るもの。予期せぬ〝気づき〟もインプレションに換算されるのはいいですね。今までOOHではできなかったので、それこそがLIVE BOARDの強みなのだと思います。これまで「いい場所ですよ」としか売り文句がなかったOOHですが、LIVE BOARDのようにインプレッションを提示すれば、やってみたいと思う企業も増えていきそうですね。
現王園:広告配信する場合にどのくらいのインプレションが得られるかどうか事前にわかるので、それを元に金額を計算して、広告料を提出させていただいています。OOHの〝見える化〟にとにかくこだわっています。
大塚:視認率によるインプレションのほかに、OOHの〝見える化〟があれば教えてください。
現王園:広告効果という意味では、株式会社ドコモ・インサイトマーケティングの協力を得て〝LIVE BOARDに接触したと思われる人(=視認エリアにいた人)〟に対して、アンケート調査をかけることをしています。
ターゲットに即した時間帯で掲出するOOHを替える
大塚:こうした取り組みに対して、どんなクライアントが反応していますか?
現王園:BtoBよりもBtoCの広告主様が多いですね。OOHは基本的に〝気づきを与える〟メディアなので、デジタルでターゲティング仕切れない部分を掘り起こすという意味では、意思決定者向けをピンポイントに狙っていくようなBtoBサービスの広告よりも、BtoCのほうが合っているのでは?と思っています。
大塚:これまでの話を聞くと、OOH事業者、クライアント、そしてコンシューマーと、より明確にインタラクティブな関係性にしているように感じますね。
現王園:LIVEBOARDは、従来のOOHとは異なり、「枠」を基準に販売を行っていないので、よりフレキシブルな広告放映が可能です。
例えば、朝の時間帯はビジネスパーソン向け、昼は主婦向け、午後は学生向け、さらに帰宅する時間帯は再びビジネスパーソン向けというように、クライアントのターゲットが多い時間帯だけに広告を出すことができるのです。
ネットワーク力も弊社の強みとなっておりまして、自社で設置している80以上の面に加え、協力関係にある他の事業者さんが運営されているを面を合わせると約5,000面(ドコモショップ内スクリーン含め)に広告放映が可能です。
渋谷のど真ん中だけではなくて、船橋や西日暮里といった郊外エリアにも媒体があるので、幅広い層のターゲットを押さえています。クライアントが希望するターゲットの多い時間、場所でのOOH提案ができるという点が強みだと自負しています。
最大で全国124の屋外スクリーン、153の屋内スクリーン、480の電車内スクリーン、2,693のドコモショップ内スクリーンで希望の期間・時間帯に合わせて配信を可能にしている。 ※2021年7月末時点
大塚:ロケーションベースでの受け方もできるのですか?
現王園:例えば、先日、ある会社さんから、ドラッグストアの近くで広告を出したいという依頼がありました。そこで指定のドラッグストアから半径100m以内にあるスクリーンに出すことを提案。さらにその半径100m以内にあるスクリーンの中でも、商品のターゲット層となる男性30代を狙った時間のみで広告を放映するプランを作成しています。
写真は、全国ドラッグストア周辺ネットワーク(半径100m圏内)の例。
大塚:広告を見た後、ドラッグストアさんで購入してもらえるように促すというのは、クライアントにとって、それが一番のゴールと言えますよね。LIVE BOARDさんの取り組みが、日本のOOH業界を変えていくーーそんな気がしますね。
後編へ続く
プロフィール
現王園章太
株式会社LIVE BOARD
クライアントサービス部
広告代理店の電通で屋外広告と交通広告を中心とした業務に8年間携わりつつ、2021年4月までイギリスのOOHグローバルエージェンシーPosterscopeに出向し、OOHの仕事を学ぶ。その後、NTTドコモと電通の共同出資で新設された株式会社 LIVE BOARDに入社し、OOHを起点としたマーケティングを実践している。
株式会社 LIVE BOARD サービスサイト
https://service.liveboard.co.jp/
株式会社LIVE BOARD コーポレートサイト
https://liveboard.co.jp/
現王園章太さんツイッター
https://twitter.com/gennozono
現王園章太さん関連記事
https://space-media.jp/news/detail/2707/
https://space-media.jp/news/detail/2681/
取材・文/寺田剛治
スマホ端末の位置情報等※からスクリーンの広告視認者数(インプレッション)をクライアントに提示することで、OOHのPDCA(Plan→Do→Check→Action)サイクルを回すことに注力している同社の取り組みについて、クライアントサービス部の現王園章太氏に聞いた。
※利用者の個人情報が特定されない統計的な情報として配慮されています
日本のOOH業界が抱える3つの課題
大塚:既存のOOHにはどんな問題があるとお考えですか?
現王園:大きな課題が3つほどあると思っています。ひとつが、何人の人が広告を見ているのか、という視認者数の計測ができていないことです。コロナ禍において、「本日の渋谷スクランブル交差点の人流は、去年に比べて90%でした」などと報じられていますが、人流をメディアベースに落とし込んだとき、あの看板の前に何人いたのか? というクライアントにとって非常に重要な情報を計測できていない状態が当たり前になっています。
大塚:確かに、デジタル広告がデータで示せるのに対して、OOHの価値はかなり不安定な状態であるということとも言えますね。
現王園:ふたつ目は、フレキシビリティーにかける点。クライアントがすぐにOOH広告を出したいと思っても、掲出できるのが最短でも7日~10日後とかになる。もちろんOOHはそもそもアナログなものなので仕方がない部分があるのですが、DOOHでも改善されていない部分なのです。
大塚:それって仕掛けているOOH事業者側が、急な依頼には対応したくないという部分もありますよね。言葉を選ばずに言えば、ラクをしたいから。
現王園:そして3つ目は、〝出しっ放し〟で効果を測定できないこと。ラーメン屋さんを例にあげるとするなら、「確かに看板は見たけれど、俺の店に食べにきているお客さん、どれくらい増えているのかな? 知ってくれているのかな?」というように、非常にその効果がわかりづらいメディアなんです。
大塚:この3つの課題を解決するために設立されたのがLIVE BOARDなんですね。
スマホ端末の位置情報等をOOHの効果測定に活用
現王園:2019年2月、NTTドコモと電通が共同出資して誕生しました。それぞれがどのような役割をしているかというと、電通は商品開発や設計を手掛けて、〝売れるものを作る〟ことに注力。一方、NTTドコモは〝データ〟の活用です。日本のスマホキャリア市場で43.8%のシェアを持っています。ユーザの許諾を得た端末に紐づいている契約者情報と位置情報等のデータを取得でき、それらを匿名化加工した形でOOHの効果測定や検証に役立てています。
NTTドコモのキャリアデータを用いて、指定したターゲット含有率が高い場所/時間で配信できる。
大塚:つまり、例えば渋谷のOOHの前に、何時に何人くらいいるかがわかるようにしているということですね。それだけでなく、OOHを見て実際に店舗に行ったかどうかということもわかりますよね。
現王園:そうです。会社を立ち上げた時のコンセプトは、NTTドコモが持っている情報を最大限活用した商品を設計してOOH業界に新しいメディアを作っていくというもの。たとえば、OOHを見た人が、実際にスマホなどで検索をかけたか、サイトに来訪したか、実際に購入したかどうかなど、様々なアイデアを実現できる環境を持っていることがLIVE BOARDの強みになっています。
大塚:これまでオフラインだったOOHにNTTドコモのデータを活用することで、ある意味で〝オンライン化〟するということですね。
現王園:弊社は、自社で80面以上のスクリーンを持っているのですが、その広告配信システムには、デジタル広告に近い配信システムを使っています。既存のOOHでは、先に述べたように出稿までに7日~10日の期間が必要だったりしましたが、このシステムを導入したことで、広告の掲出までの期間を大幅に短縮できるようにしました。
大塚:インプレッションはどのように計測しているのでしょうか?
現王園:ドコモの位置情報などのデータを活用しています。
大塚:位置情報だけで、それは人数を推測できるものなのですか?
現王園:事前に各スクリーンを実際に確認し、「ここからだと見える」「ここにいるとビルが邪魔になって見えない」というように〝視認エリア〟を決めます。定義(画像①)した視認エリアに、NTTドコモの位置情報をリンクさせることで、広告が流れるタイミングで何人そこにいるのかわかります。また、単純に視認エリアにいるという情報だけだと、広告に対して逆方向に歩いているなど、視認していない人をインプレッションにカウントしてしまう場合があります。そこで各ロケーション別の特性を踏まえた〝視認率〟をインプレッションの推計に利用しています。例えば、広告が配信された時、100人が視認エリアにいたとしても、視認率が6割であれば60インプレッションとなるのです。(画像②)
画像①
画像②
大塚:Webメディアなどでは、広告とわかった瞬間に避ける人が多いですが、OOHだと自然と目に入るもの。予期せぬ〝気づき〟もインプレションに換算されるのはいいですね。今までOOHではできなかったので、それこそがLIVE BOARDの強みなのだと思います。これまで「いい場所ですよ」としか売り文句がなかったOOHですが、LIVE BOARDのようにインプレッションを提示すれば、やってみたいと思う企業も増えていきそうですね。
現王園:広告配信する場合にどのくらいのインプレションが得られるかどうか事前にわかるので、それを元に金額を計算して、広告料を提出させていただいています。OOHの〝見える化〟にとにかくこだわっています。
大塚:視認率によるインプレションのほかに、OOHの〝見える化〟があれば教えてください。
現王園:広告効果という意味では、株式会社ドコモ・インサイトマーケティングの協力を得て〝LIVE BOARDに接触したと思われる人(=視認エリアにいた人)〟に対して、アンケート調査をかけることをしています。
ターゲットに即した時間帯で掲出するOOHを替える
大塚:こうした取り組みに対して、どんなクライアントが反応していますか?
現王園:BtoBよりもBtoCの広告主様が多いですね。OOHは基本的に〝気づきを与える〟メディアなので、デジタルでターゲティング仕切れない部分を掘り起こすという意味では、意思決定者向けをピンポイントに狙っていくようなBtoBサービスの広告よりも、BtoCのほうが合っているのでは?と思っています。
大塚:これまでの話を聞くと、OOH事業者、クライアント、そしてコンシューマーと、より明確にインタラクティブな関係性にしているように感じますね。
現王園:LIVEBOARDは、従来のOOHとは異なり、「枠」を基準に販売を行っていないので、よりフレキシブルな広告放映が可能です。
例えば、朝の時間帯はビジネスパーソン向け、昼は主婦向け、午後は学生向け、さらに帰宅する時間帯は再びビジネスパーソン向けというように、クライアントのターゲットが多い時間帯だけに広告を出すことができるのです。
ネットワーク力も弊社の強みとなっておりまして、自社で設置している80以上の面に加え、協力関係にある他の事業者さんが運営されているを面を合わせると約5,000面(ドコモショップ内スクリーン含め)に広告放映が可能です。
渋谷のど真ん中だけではなくて、船橋や西日暮里といった郊外エリアにも媒体があるので、幅広い層のターゲットを押さえています。クライアントが希望するターゲットの多い時間、場所でのOOH提案ができるという点が強みだと自負しています。
最大で全国124の屋外スクリーン、153の屋内スクリーン、480の電車内スクリーン、2,693のドコモショップ内スクリーンで希望の期間・時間帯に合わせて配信を可能にしている。 ※2021年7月末時点
大塚:ロケーションベースでの受け方もできるのですか?
現王園:例えば、先日、ある会社さんから、ドラッグストアの近くで広告を出したいという依頼がありました。そこで指定のドラッグストアから半径100m以内にあるスクリーンに出すことを提案。さらにその半径100m以内にあるスクリーンの中でも、商品のターゲット層となる男性30代を狙った時間のみで広告を放映するプランを作成しています。
写真は、全国ドラッグストア周辺ネットワーク(半径100m圏内)の例。
大塚:広告を見た後、ドラッグストアさんで購入してもらえるように促すというのは、クライアントにとって、それが一番のゴールと言えますよね。LIVE BOARDさんの取り組みが、日本のOOH業界を変えていくーーそんな気がしますね。
後編へ続く
プロフィール
現王園章太
株式会社LIVE BOARD
クライアントサービス部
広告代理店の電通で屋外広告と交通広告を中心とした業務に8年間携わりつつ、2021年4月までイギリスのOOHグローバルエージェンシーPosterscopeに出向し、OOHの仕事を学ぶ。その後、NTTドコモと電通の共同出資で新設された株式会社 LIVE BOARDに入社し、OOHを起点としたマーケティングを実践している。
株式会社 LIVE BOARD サービスサイト
https://service.liveboard.co.jp/
株式会社LIVE BOARD コーポレートサイト
https://liveboard.co.jp/
現王園章太さんツイッター
https://twitter.com/gennozono
現王園章太さん関連記事
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https://space-media.jp/news/detail/2681/
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